(※画像はイメージです/PIXTA)

住宅資金贈与とはどのような行為をいうのでしょうか。そして、贈与税対策になる住宅取得等資金贈与の非課税制度とは誰でも受けられるのでしょうか。住宅資金贈与と住宅取得等資金の非課税制度についての基本を解説します。

住宅購入に当たって受けた資金援助は贈与税の対象になりますが、非課税の特例を活用することで贈与税を軽減させることができます。

 

ただし、税制は頻繁に改正されています。この特例についても最新の改正で非課税枠の縮小が行われており、今後廃止される可能性にも目を向けておかなければなりません。本記事では、住宅取得等資金贈与の非課税制度について解説します。

 

目次
1. 住宅資金贈与とはどういう行為?行うことで課せられる贈与税の基本
1.1. 住宅資金贈与とは特定の親族に住宅取得資金を贈与する行為を指す
2. 住宅資金贈与に適用できる特例「住宅取得等資金贈与の非課税制度」とは
2.1.【内容】住宅資金贈与が一定額まで非課税になる特例
2.2.【要件】「受贈者・新築・増改築」について定められている
2.3.【利用方法】申請期間と必要書類
3. 住宅取得等資金の非課税制度に併用できる制度
制度①:1年間に110万円まで非課税となる「暦年課税」
制度②:総額2,500万円まで非課税となる「相続時精算課税」
4. 住宅取得等資金の非課税制度が廃止される?2022年以降の動向とは
5. 住宅資金贈与を行うときの注意点
5.1. 頭金にしないでローン等に使用すると非課税にならない
5.2. 遺産分割トラブルのリスクがある
5.3. 小規模宅地等の特例が使用できなくなる
6. 住宅資金贈与に関するQ&A
Q1. 父母それぞれで贈与できるか?
Q2. 別荘やセカンドハウスの購入は可能か?
Q3. 贈与が住宅引き渡し後になった場合も特例は使える?
まとめ

1. 住宅資金贈与とはどういう行為?行うことで課せられる贈与税の基本

住宅資金贈与とはどういう行為?行うことで課せられる贈与税の基本
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住宅資金贈与とは文字通り、住宅を取得するためにかかる資金の贈与を受けることをいいます。ただし、誰からの贈与でも該当するわけではなく、特定の人からの援助に限定されている点に注意しなければなりません。

 

1.1. 住宅資金贈与とは特定の親族に住宅取得資金を贈与する行為を指す

住宅資金贈与とは、直系尊属から直系卑属への資金援助が該当します。直系尊属とは父母や祖父母、曾祖父母等で、直系卑属とは子や孫、曾孫のことです。家系図で見ると、縦の繋がり間における贈与を指しています。

 

たとえば、父から子へ、祖母から孫へ等の資金援助が住宅資金贈与に当たります。

2. 住宅資金贈与に適用できる特例「住宅取得等資金贈与の非課税制度」とは

住宅資金贈与に適用できる特例「住宅取得等資金贈与の非課税制度」とは
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住宅資金贈与を受けると財産が人から人へ無償で移転(贈与)するため、贈与税の対象になります。住宅資金の贈与額は数百万、数千万円になるケースが多く、そのままでは多額の贈与税が発生します。ここで有効となるのが、住宅取得等資金贈与の非課税制度です。

 

2.1.【内容】住宅資金贈与が一定額まで非課税になる特例

住宅取得等資金贈与の非課税制度とは、直系尊属(父母や祖父母等)から援助を受けた住宅取得資金のうち、住宅の性能に応じて次の金額まで贈与税が非課税になる制度です。

 

住宅の性能

省エネ等住宅

左記以外の住宅

非課税額

1,000万円

500万円

 

省エネ等住宅とは、次のいずれかに適合する住宅をいいます。

 

  • 断熱等性能等級4以上または一次エネルギー消費量等級4以上であること。
  • 耐震等級(構造躯体の倒壊等防止)2以上または免震建築物であること。
  • 高齢者等配慮対策等級(専用部分)3以上であること。

 

2.2.【要件】「受贈者・新築・増改築」について定められている

受贈者とは、贈与を受ける人のことをいいます。住宅取得等資金贈与の非課税制度を受けるためには、受贈者と取得する住宅について要件すべてに該当していなければなりません

 

なお、住宅資金贈与における住宅の取得とは、新築住宅に限らず中古住宅や増改築も含まれます。それぞれの要件を見ていきましょう。

 

2.2.1. 受贈者に関する要件

まず受贈者についての要件は次の8つです。

 

  1. 贈与者の直系卑属
  2. 贈与年1月1日時点で18歳以上
  3. 贈与年分の合計所得金額2,000万円以下
  4. 平成21年から令和3年までこの特例の適用を受けたことがない
  5. 配偶者、親族、特別な関係にある法人以外から取得した住宅
  6. 贈与年の翌年3月15日までに住宅資金贈与を受けた金額を使って住宅を取得
  7. 贈与年の翌年3月15日までに居住を開始すること、または同日後遅滞なく居住することが確実
  8. 贈与時の住所が日本国内にある

 

2.2.2. 住宅を新築・取得するときの要件

住宅を新築・取得するときの要件は以下の通りです。

 

1. 住宅の登記簿上の床面積が40㎡以上240㎡以下であり、その半分以上が受贈者の居住用である

 

2. 住宅が次のいずれかである

  • 建築後使用されたことがない(ア)
  • 中古住宅で、昭和57年1月1日以後に建築された(イ)
  • 中古住宅で、地震安全性に係る基準に適合するものであることにつき、一定の書類により証明されている(ウ)
  • (イ)(ウ)に該当しない中古住宅で、住宅取得日までに都道府県知事等に耐震改修を行う申請をし、かつ、贈与年の翌年3月15日までに耐震改修によって地震安全性に係る基準に適合するものであることにつき、一定の書類により証明されている(エ)

 

2.2.3. 住宅を増改築するときの要件

既存の住宅を増改築した場合の要件は、以下の通りでです。

 

1. 住宅の登記簿上の床面積が40㎡以上240㎡以下であり、その半分以上が受贈者の居住用である

 

2. 受贈者が所有し、かつ居住している住宅に対して行われた増改築であり、一定の工事に該当することについて次の書類等によって証明されている

  • 確認済証の写し
  • 検査済証の写し
  • 増改築等工事証明書

 

3. 増改築にかかった費用が100万円以上であり、増改築費用の半分以上が受贈者の居住用工事に使われている

 

2.3.【利用方法】申請期間と必要書類

前述の適用要件に該当すれば、住宅取得等資金の非課税制度の適用を受けられます。

 

適用を受けたい場合には、贈与税申告書と必要書類を贈与年の翌年2月1日から3月15日までの間に、納税地を管轄している税務署に提出しなければなりません。なお、適用によって贈与税が0円になる場合であっても、申告は必要です。

 

一般的に必要となる書類は次の通りです。ただし、詳しくはそれぞれの状況によって異なるため、事前に税務署に問い合わせることをおすすめします。

 

必要書類は以下の通りです。

 

  • 戸籍謄本
  • 新築や取得、増改築の契約書の写し
  • 住宅の登記事項証明書
  • 贈与を受けた年の源泉徴収票等、合計所得金額の証明ができるもの
  • 住宅性能証明書
  • 建設住宅性能評価書
  • 増改築等工事証明書等

3. 住宅取得等資金の非課税制度に併用できる制度

住宅取得等資金の非課税制度に併用できる制度
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この特例は贈与税の他の控除や非課税制度を併用することができるため、上手に組み合わせることによって更に贈与税を節税することが可能です。組み合わせられる制度「暦年課税の基礎控除」と「相続時精算課税制度」について解説します。

 

制度①:1年間に110万円まで非課税となる「暦年課税」

暦年課税とは名称通り、暦年(1月1日~12月31日)で行われた贈与に対して贈与税を計算する方法です。暦年課税には1年間に110万円の基礎控除が設けられているため、住宅取得等資金の非課税制度と併用することで、最大1,110万円まで贈与税がかかりません

 

たとえば、父から子へ2,500万円の住宅資金贈与を行ったとします。省エネ等住宅に該当する特例の適用を受け、暦年課税も併用した場合には、366万円の贈与税がかかります。

 

2,500万円-(非課税額1,000万円+暦年課税の基礎控除110万円)=1,390万円

1,390万円×40%-190万円=366万円

 

なお、暦年課税は贈与税を計算する際の原則的な課税方法です。次に解説する相続時精算課税制度を選択しない限り、必ず、住宅取得等資金の非課税制度とセットで利用することになります。

 

■特別贈与財産用(特例税率)

基礎控除後の課税価格

200万円以下

400万円以下

600万円以下

1,000万円以下

1,500万円以下

3,000万円以下

4,500万円以下

4,500万円超

税率

10%

15%

20%

30%

40%

45%

50%

55%

控除額

-

10万円

30万円

90万円

190万円

265万円

415万円

640万円

国税庁|贈与税の計算と税率(暦年課税)参照

 

制度②:総額2,500万円まで非課税となる「相続時精算課税」

贈与税のもう1つの課税方式である相続時精算課税制度も併用が可能です。

 

相続時精算課税制度には2,500万円の非課税額が設けられており、贈与額2,500万円までついては贈与税がかかりません

 

2,500万円もの贈与を無税で行うことができ、魅力が大きな制度に思えますが、次の点に注意が必要です。

 

  • 2,500万円を超えた部分については一律20%の贈与税がかかる
  • 相続時精算課税制度を一度選択すると、その贈与者からの贈与については暦年課税に戻ることはできない
  • 税務署への選択届が必要
  • 贈与を受ける都度、贈与税申告が必要
  • 相続時精算課税制度の適用を受けた贈与額については、相続時に相続財産に足し戻されて相続税が計算される

 

将来、相続税がかからない人であれば、一度に多額の贈与を非課税で行うことができ有効です。しかし、相続税がかかる可能性がある人の場合には、贈与税と相続税どちらが安く済むのかを慎重に検討する必要があります。

 

4. 住宅取得等資金の非課税制度が廃止される?2022年以降の動向とは

住宅取得等資金の非課税制度が廃止される?2022年以降の動向とは
(※画像はイメージです/PIXTA)

 

住宅取得等資金の非課税制度は期限を定めた制度(時限法)となっており、期限を迎えそうになる度に税制改正によって延長されてきました。

 

最新の令和4年度税制改正が発表される前の期限は2021年12月31日までとなっていたことから、いよいよ廃止になるのではないかと噂されていましたが、令和4年度税制改正によって期限は2年間延長され、2023年12月31日までとなりました。

 

その他の改正ポイントは次の通りです。

 

 

改正前

改正後

非課税額

省エネ等住宅

1,500万円

1,000万円

上記以外の住宅

1,000万円

500万円

中古住宅の築年数

取得日前20年以内に建築されたもの

(耐火建築物は25年以内)

昭和57年1月1日以降の住宅は

新耐震基準適合とみなす

受贈者の年齢

20歳

18歳

 

2023年12月31日以降も延長されるとは限りません。非課税額が年々縮小している点も考慮すると、2023年までがラストチャンスになる可能性があります

5. 住宅資金贈与を行うときの注意点

住宅資金贈与を行うときの注意点
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住宅資金贈与や住宅取得等資金の非課税制度だけに目を向けてしまうと、思わぬトラブルが発生する可能性があるため注意しなければなりません。住宅資金贈与を検討する際に注意したいポイントを解説します。

 

5.1. 頭金にしないでローン等に使用すると非課税にならない

住宅資金贈与を受け、住宅取得等資金の非課税制度の適用を受けたい場合には、贈与を受けたお金を住宅購入の頭金として直接使用しなければなりません。

 

たとえば、とりあえず購入額の全額で住宅ローンを組み、住宅資金贈与の金額をローンに充当するような方法を取ってしまうと適用を受けられません。住宅ローン控除の金額を大きくするために検討しがちな方法であり、注意が必要です。

 

5.2. 遺産分割トラブルのリスクがある

住宅資金贈与を将来の相続人のうち特定の人にだけ行った場合、他の相続人がその事実を知ったらどう思うでしょうか。不満を持つ相続人もいるでしょう。

 

隠し通せればよいと思うかもしれませんが、住宅取得等資金の非課税制度の適用を受ける際には贈与税申告を行うため、その事実は確実に残ります。

 

子や孫が複数人いる場合には、全員に平等に住宅資金贈与を行う、特定の人にだけ行う場合には全員の理解を得る等、慎重な対応が必要です。

 

5.3. 小規模宅地等の特例が使用できなくなる

住宅資金贈与を行う父母や祖父母が自宅を所有している場合には、将来、相続財産に自宅が含まれることになります。

 

不動産は相続税評価額が高額になりやすく、相続税発生の有無にもかかわってくる財産です。自宅の土地については小規模宅地等の特例の適用によって、相続税評価額を減額することができます。

 

5,000万円の土地であっても、1,000万円の土地として相続税が計算されるのです。親と同居していない子が小規模宅地等の特例の適用を受けるためには、持ち家に住んだことがあってはいけません。

 

将来の相続人に住宅資金贈与を行うということは、その受贈者が自宅を相続したとしても、小規模宅地等の特例の適用が受けられないということになります。

6. 住宅資金贈与に関するQ&A

住宅資金贈与に関するQ&A
(※画像はイメージです/PIXTA)

 

実際に住宅資金贈与を行う際には、細かい疑問点が浮かんでくるでしょう。それでは最後に、住宅資金贈与を行う際に多くの人が疑問に感じる点について解説します。

 

Q1. 父母それぞれで贈与できるか?

父母それぞれから贈与を受けること自体は可能です。しかし、住宅取得等資金の非課税制度の非課税額は、受贈者側に設けられている金額であることから、父母からそれぞれ贈与を受けても2倍にはならない点に注意しましょう。

 

たとえば、非課税額1,000万円の場合、父から1,000万円、母から1,000万円の住宅資金贈与を受けても、非課税額は1,000万円です。暦年課税の非課税額110万円を合わせた1,110万円を超える部分、890万円に対して贈与税がかかるということになります。

 

Q2. 別荘やセカンドハウスの購入は可能か?

贈与を受けた資金で、別荘やセカンドハウスを購入すること自体はもちろん可能です。しかし、住宅取得等資金の非課税制度は受贈者が主として居住する住宅を対象とする制度であることから、別荘やセカンドハウスで適用を受けることはできません

 

別荘はいわゆる贅沢品であることから、特例の適用ができない点は理解しやすいでしょう。その他、仕事の関係で必要があって購入するセカンドハウスも、同様の取り扱いになる点に注意しなければなりません。

 

Q3. 贈与が住宅引き渡し後になった場合も特例は使える?

住宅取得等資金の非課税制度は、居住開始前に受けた住宅資金贈与に対して適用できます。よって、住宅引き渡し後の住宅資金贈与では適用対象外です

 

そのまま何もしなければ暦年課税で贈与税が計算されるため、多額の贈与税が発生してしまいます。住宅引き渡し後の場合には、相続時精算課税制度の適用を検討しましょう。

まとめ

住宅資金贈与は子や孫のマイホームの夢を手助けできるのはもちろんのこと、贈与者の将来の相続税対策にも繋がります。住宅取得等資金の非課税制度は、500万円または1,000万円という大きな金額を贈与税がかかることなく移転できます。住宅資金贈与を行う際には、ぜひ検討してください。

 

ただし、適用要件が細かいうえに贈与税申告の必要もあることから、税理士等の専門家に相談しながら進めるようにしましょう

 

 

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