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肉体は作品であり、コンテストは展示会
■還暦コンテストビルダー
先にも少し触れたコンテストビルダーのOさん(60)もトレーニング歴は30年近い。が、入り口はやはり健康管理のために通った普通の総合的なジムだったという。私も経験あるが、こういうジムで筋トレに本気を出すと、少々周りから浮いてしまう。Oさんも「SEIBUGYM」に移ってからコンテストに目が向くようになった。コンテスト出場経験も長い。この春に会社を還暦で定年退職してからは「60歳以上級」のクラスに焦点を絞って生活のすべてがトレーニング中心だ。
ちなみにボディビル全国大会の日本マスターズ選手権年齢別クラスは以下のように分かれている。40歳以上級、50歳以上級(70㎏以下級と70㎏超級)、60 歳以上級、65歳以上級、70歳以上級、75歳以上級、80歳以上級(参考クラス)。
Oさんの現在のトレーニングは「ダブルスプリット」。午前中と午後に細かく部位を分けて鍛える方法だ。エネルギー切れを防ぎ、集中力を高めたトレーニングが可能になる。かのアーノルド・シュワルツェネッガーが1日2回トレーニングをして「ダブルスプリット」が世界に知られるようになった。
Oさんとは昨年くらいまでは、大会直前まで一緒にワインなど飲んでいたが「ダブルスプリット」で追い込む今年は、さすがにそんな声もかけにくい。
なぜコンテストを目指すのか、あらためて訊いてみた。Oさんの美意識と人柄がよく出ているので、メールの文章をそのまま載せる。
「自分は筋トレやボディビルってスポーツや体育会系のジャンルとは少し違うと思っています。彫刻家や陶芸家が自分の体を素材に理想の形を追い求め作り上げていくような感じですかね。だから、肉体は作品でありコンテストは現時点での自分の最高傑作を発表する展示会なんです、もちろん賞レースでもありますが。
スポーツ選手は歳がくれば競技者として引退がありますが、芸術家は一生、探求者であり夢追い人でいられます。いくつになっても発表の場は用意されていますし、ジムだって今ではどこにでもあります。トレーニングは歳なんて関係なくいつ始めてもいいんです。そして作品は発表しないと(笑)」
■還暦パワーリフター
パワーリフターのAさんは現在61歳。段位5段という記録を30代の後半で達成したが、この記録はH市でも数人しかいないという。この段位認定は、かつて早稲田ダンベル倶楽部のボディビルダーで指導者でもある窪田登氏によって提唱された認定競技で、通常のパワー・リフティングと違うのは各種目の挙上回数が10回というところだ。種目もベンチプレス、デッドリフトに加えフロントプレスもあって、これがいちばん難しいという。
ちなみに段位ごとの重量は下表の通り。とりあえず目標とするウエイトがあると励みにはなる。確かに日頃トレーニングをしたことのないフロントプレスは難しそうだ。
パワーリフトの魅力とは何か。
「パワーリフトは記録がはっきりと眼に見えるのがいい」とAさんは言う。
これは私などでもわかる。筋肉のキレには主観が入るが挙上重量はいつだって客観的だ。少しずつ重いウエイトを扱えるようになることは素朴に嬉しい。歳をとると忘れてしまう、こういう素朴な喜びがあることが還暦筋トレの魅力でもある。昔、ボルドーワイン好きのこのAさんに、サプリは何を摂っているかとグラスを傾けつつ訊いたことがある。
「サプリ? 全然摂らないよ。プロテインも飲まない。そもそもサプリが必要なほどトレーニングで追い込んでいるかどうか。本当はそっちの方が大事じゃないのかな」と、笑われた。パワーリフターは、ボディビルダーほど見た目の厳密な減量を必要としないためとはいえ、多くの軟弱トレーニーは返す言葉もないはずだ。
Aさんは、仕事が忙しく、ジム通いもなかなかできなかったが還暦退職をきっかけにトレーニングを再開した。そのウエイトを聞いて驚いた。
「全然ダメ。ベンチ100㎏、スクワット120㎏、デッド140㎏位かな。1回の記録だし」
いえいえそれだけ上がれば十分です。いわば還暦をきっかけに「戻ってきたパワーリフター」であるAさんだが、思いのほか筋力というものは低下しないようだ。しかし「オーバートレーニング? 毎日トレーニングしても感じたことないけど」と笑うから、ただ単に元々の体力が違うのかもしれない。真似していいのか、真似しない方がいいのか悩むところだ。