課税事業者になるべき?インボイス導入に備えて「免税事業者」がすべき対応は【税理士が解説】

課税事業者になるべき?インボイス導入に備えて「免税事業者」がすべき対応は【税理士が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

インボイスとは、消費税の仕入税額控除を受けるための制度です。国税局は免税事業者に対し、自身の事業実態に合わせてインボイス発行事業者の登録を受けるか否かを検討するようなお知らせも出していますが、免税事業者はどんな備えをするべきなのでしょうか? 板山翔税理士が解説します。

 

――私は消費税の免税事業者なのですが、インボイスに備えて何かしなければならないことはあるのでしょうか?

 

板山翔税理士:「『請求書の表示』と、得意先に事業者が多い場合は『価格設定』の2点、対応を検討する必要があります。」

免税事業者はインボイスに備えて何をすべき?

「インボイスが始まれば、免税事業者も消費税を納めないといけなくなる?」といった噂でも広まっているのか、そう勘違いしている人が多いのか、免税事業者の方から、インボイスの対応について相談されることが増えました。

 

しかし、ほとんどの免税事業者はそのまま免税事業者でいればいいですし、わざわざ課税事業者を選択したり、インボイスの番号を取得したりする必要はありません。

 

それよりも、「請求書の表示」と、得意先に消費者ではなく事業者が多い場合は「価格設定」の2点、対応をご検討ください。

①請求書の表示について

■請求書には「請求金額のみ」を記載する

今まで請求書に消費税10%を別表示していた人は、消費税は表示せずに、税込価格というか、請求金額のみを請求書に記載するように変更しておいた方が無難です。

 

インボイスが始まると、免税事業者であることが相手にわかってしまうので、消費税分を値引きするように要請されてしまうおそれがあるからです。

②価格設定について

得意先が免税事業者から商品を110円で仕入れた場合でも、今までは内消費税10円を支払ったものとして、得意先が納める消費税から10円控除してもらえました(これを仕入税額控除といいます)。

 

したがって、得意先の仕入負担は実質100円(仕入代金110円-仕入税額控除10円)ですみました。

 

しかし、インボイスが始まると、免税事業者から110円で仕入れた場合、消費税10円は支払っていないことになり、10円の仕入税額控除は受けられなくなってしまいます。

 

10円まるまる控除が受けられなくなるわけではなくて、令和5年10月1日~令和8年9月30日の間は80%仕入税額控除ができるため(※1)、この場合8円は仕入税額控除が受けられます。

 

よって、得意先の仕入負担は実質102円(仕入代金110円-仕入税額控除8円)となります(※2)。

 

※1 令和8年10月1日~令和11年9月30日は50%仕入税額控除可能で、令和11年10月1日以降は控除不可です。

 

※2 得意先が一般消費者の場合は、一般消費者はそもそも仕入税額控除が受けられないので、どちらの場合も仕入負担は110円です。

 

このように、得意先からすれば、同じ110円で仕入れるのであれば、10円まるまる仕入税額控除が受けられる課税事業者から仕入れた方が実質負担が少なくてすみます。

 

したがって、売値を下げるよう要請されたり、同じ値段で販売している課税事業者に仕入先を変更されたりするおそれがあります。

 

そこで、令和5年10月1日から自ら課税事業者を選択して、条件を同じにしてしまうという特例も用意されていますが、消費税の納税負担や手間が大きいため、あまりおすすめできません。

 

免税事業者のままでいて、値下げで対応するのか、付加価値をつけて販売価格をキープするかなど、価格設定で折り合いをつけた方が現実的でしょう。

 

もちろん、80%仕入税額控除が認められる令和8年9月30日までは影響も小さいですし、気にせず価格をキープする人も多いと思いますので、慌てずに対処してください。

 

 

板山 翔

板山翔税理士事務所 代表、税理士

 

おそらく日本初の「オンライン専門の税理士事務所」の創設者。自社の事業を「税理士業」ではなく、「経営に必要な情報をオンラインで提供する事業」と捉え、経営戦略コンサルタントとしても活動している。従業員5名以下の小さな会社の経営者を中心に、「小さな会社だからこそできる差別化戦略」の立て方や、「短期間で売上アップするためのマーケティング戦略」、「長期的に資産を形成していくための財務戦略」などを教えている。

 

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