(※写真はイメージです/PIXTA)

癌治療でも外科でも、救急の現場でも美容分野でも、「医療の名の下の犠牲」が発生する構造が、残念ながら日本の医療にも存在する。これらは何故発生し、どう事前に防げるのか。「美容医療国際職人集団」と言われるJSAS会員であり、高須克弥医師の孫弟子にもあたる医療法人美来会理事長、九野広夫医師に解説いただく。氏は、美容医療の他院修正専門医院を立ち上げ、不幸な医療事故や医療過誤を数多く目にしてきたその道のスペシャリストである。

かの有名な事件当日、現場で何が起こっていたのか?

話は変わりますが1998年7月、医師免許を取得した直後に和歌山県立医科大学付属病院の救急(CCMC)部門に志願して勤務していた折、5人の救急搬送の入電がありました。「食中毒疑いで縮瞳している?」と。当時の上司からICUに入院適応になりそうな患者情報を集めて来いとの指示があり、もう一人の研修医と共に5人全ての治療経過を診て回るだけの役割を担いました。

 

当時私は医師としては未熟ですが、私達だけが全ての患者を見廻ることができた立場にあり、かつ国試から間もない時期で知識だけは幅広くあったので、食後5‐10分で嘔吐する様な「(細菌性の)食中毒」は無いと考え、上司に「(農薬系の?)薬物中毒の症状を強く疑います」と報告しました。以前から和歌山では農薬服毒自殺も少なくなく、1995年の地下鉄サリン事件もあった後です。すると上司は「ペーペーのお前ごときに何が分かるんだ!」と私を一喝し、その上の上司にも取り合いません。

 

そのショックの反動と、社会的事件に発展するかもしれない危機感に加えて事件拡大を防ぐという妙な使命感から、その直後、テニスサークルで知り合っていたテレビ和歌山のニュースキャスターに(第一)通報している自分がいました。

 

もう一人の研修医は口を閉ざしてしまい、私を制止してそれ以上関わろうとはしませんでした。繰り返し噴水の様に嘔吐する患者の診療に当たっておられた各先生方は、首を傾げてはいるものの通報というアクションには至らず胃洗浄や点滴、家族からの情報収集等に忙殺されていました。

 

治療担当から外れていた他科の先輩医師に相談すると、今度は警察に即時に通報されたので初動捜査(事件当日)も早く、翌日早朝から全国ニュースにもなったことを覚えています。

 

一方、翌日以降に当時の権威(教授の一人)が、「毒物は青酸カリである」と主張を続けていたため、暫くは「青酸カリ事件」で(警察も渋々)捜査されたもののTV番組で外国人専門家が「ヒ素中毒症状」だと主張され、検証の結果約1ヵ月遅れで「ヒ素中毒」に覆りました。

 

尚、患者の治療には翌日以降青酸カリに合わせて「デトキソール」という解毒薬が用いられていましたが、偶々それが「ヒ素の解毒にも有効」であったのと初期の胃洗浄が奏功したためか、大学附属病院からは死亡者が出ませんでした。

 

後に、「鳥越俊太郎のザ・スクープ」の記者が私に取材を申し込みに来られました。

 

今思えば、それが医師としての洗礼を受けた「和歌山カレー事件」の発端でした。2009年11月7日にはリンゼイ・アン・ホーカーさん殺害事件で逃亡していた市橋容疑者の足蹠を追い、警察と複数の報道関係者が当梅田院に訪れましたが、当院に市橋容疑者の受診歴は無くテレビ朝日さんだけが残っていた折、市橋容疑者の美容整形術前後の写真が報道で公開されました。

 

突如、美容整形のコメンテーターになってほしいとその場で依頼され、当日夜の「報道ステーション」で放送されました。翌日、当院が市橋容疑者の施術をしたのではと勘違いした方々からの問合せが殺到して、暫く仕事になりませんでした。

 

2009年11月7日大阪梅田院にて著者九野(左)とテレビ朝日記者(右)「報道ステーション」取材風景
2009年11月7日大阪梅田院にて著者九野(左)とテレビ朝日記者(右)「報道ステーション」取材風景

何度も自殺未遂を繰り返す患者との出逢い

以来、数奇な宿命と感じつつも、私でなければできない何かを探し続けています。医大病院から美容医療の世界に転向したのも、救急の現場で美容上の悩みを苦に何度も自殺未遂を繰り返す患者に出逢ったからでした。交通外傷や癌治療では手遅れになることも度々あり、医療過誤や抗癌剤の副作用等でも死亡する人々を度々目撃するにつけ、自分の医師生命中に癌も事故死亡事案も撲滅ができないと幻滅していましたが、美容医療を通してなら自殺や未婚を精一杯防ぐことができるのではないかとの思いで、今この仕事に使命を感じています。

 

医療はブランド品の買い物とは全く異なります。富裕層であっても情報格差に負けることが充分あります。代替が効かない心身の医療サービスを受ける際に決して権威を過信せず、一次情報を鵜呑みにせず、ネット検索も当然ですがそれ以上に成書や論文、リスク情報等をとり寄せることも重要です。また、治療方針に主導権が握れるくらいまで報道記者の様に徹底した取材とセカンド、サードオピニオンを求め、信頼に足る医療従事者を味方につける(友達になる)くらいの気概が、かけがえのない自分と家族を守るためには本来必要なのかもしれません。

 

その膨大な労力を少しでも軽減させるための考え方や情報の捉え方、医師への上手な質問の仕方等をご提案し、私はお役に立ちたいと思います。賢明な皆様におかれましては、様々な医療分野で失敗や後遺障害に悩む不幸の連鎖がこれ以上なくなるための啓蒙や有益な情報であると御認識賜りましたら、是非とも身近な方にお伝え戴ければ、幸いに存じます。

 

次回以降の連載では、具体的な医療問題や被害について本質の見抜き方、原因究明と対策等について各論を展開して参ります。その啓蒙・拡散こそが次世代の医療の進化・発展につながるものと信じています。
 

 

九野 広夫

医療法人美来会 理事長

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