(※写真はイメージです/PIXTA)

早稲田大学名誉教授・浅川基男氏の著書『日本のものづくりはもう勝てないのか!?』より一部を抜粋・再編集し、各国と比べた日本の現状について見ていきます。

日本の「大学進学率」「理工系への進学率」が低いワケ

日本人にはあまり知られていないが、米国・イギリス・ドイツ・韓国・日本を比較すると、日本の大学進学率は53%と最低部類に属する。

 

また、日本では大学進学者のうち理工系が2割強しかいない。ほかの国では3割~6割、韓国・ドイツでは6割を超えている。絶対数でも、日本は毎年16万人と各国中で最低である。

 

文科系進学者の多くが高校2年生以降、理数系の訓練を受けていない点が、日本の大きな問題である。

 

これは中学・高校の数学の教え方に難点があるからだ。特に、文理に関係なく、虚数や行列、微積分、統計学、Excel活用による実計算法などが、いかに社会に出てから有用かを高校時代から教え込むべきだ。

 

そのためには、数学を興味ある授業とするために、工学系出身者(実務経験者)が教師になることが極めて大切である。

 

このように、日本の理工系大学では、絶対数が少ない上に、2000年以降から情報やバイオに学生の人気が集中し、ものづくり産業の核である機械・電気・材料系に優秀な人材が、ますます集まりにくくなっており、ものづくり産業を根底から揺るがしている。

 

大学でのものづくりの教育・研究は極めて大切である。筆者は、今から40年前に企業の企画部に在籍し、「米国の鉄鋼業はなぜ衰退したか」を調査する機会を得た。

 

結論は「①優秀な人材が鉄鋼業に来なくなり金融界にシフトした、②鉄鋼業が設備投資しなくなった」の2点に集約された。

 

40年後の現在、日本の鉄鋼業のみならず、ものづくり業界がまさにこの罠に陥ってしまいつつある。

 

筆者の1996年以降の大学教員経験によると、学生の生きざまが変化してきたのは2000年頃からではないかと思っている。一言でいうと、良くも悪くも自己主張や“個”への思い入れが相対的に少なくなったことである。

 

例えば、トヨタに就職する学生に「なぜトヨタなのか?」と質問しても明確な理由や主張、すなわち“個人の思い”が聞こえてこない。トヨタの採用者も同じ感想を持っている。

次ページ日本の「大学の構造」と「大学教員」にある“問題”

※本記事は幻冬舎ゴールドライフオンラインの連載の書籍『日本のものづくりはもう勝てないのか!?』(幻冬舎MC)より一部を抜粋したものです。最新の法令等には対応していない場合がございますので、あらかじめご了承ください。
※「障害」を医学用語としてとらえ、漢字表記としています。

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