(※写真はイメージです/PIXTA)

日本人の給料は失われた30年でどうなったのでしょうか。年収を「800万円超」「800万円以下」「400万円以下」という3区分にして推移をみてみると、「400万円以下」が激増する一方で、「800万円超」はどうなったのでしょうか。北見式賃金研究所長の北見昌朗氏が過去30年間の給与を検証します。

業績低迷の「日本株式会社」の敗北の歴史

これらのデータから何を読み取るべきか?

 

「世界で負け組になった『日本株式会社』は業績低迷に陥り、従業員(国民)は年収ダウンを強いられた」と解釈するのが自然ではなかろうか? 


「大手企業の男性の年収がガッタガタ」と書きながら、あらためて過去20数年間を振り返ってみた。

 

日本の給与がピークだったのは1997年だったが、その年に起きたのが山一証券の経営破綻だった。11月22日の新聞で「山一証券自主廃業へ」とすっぱ抜かれた。

 

野澤正平社長は「これだけは言いたいのは、私らが悪いんであって、社員は悪くありませんから」と話し、やおら立ち上がって「どうか社員の皆さんに応援をしてやってください。お願いします。私らが悪いんです」と涙で訴えた。

 

あの男泣きは、今でも蘇ってくる。

 

銀行では、北海道拓殖銀行、日本長期信用銀行、日本債権信用銀行が破綻した。破綻ではないものの、再編の波にのまれて三和銀行、東海銀行、協和銀行、大和銀行など多くの名前が消えた。

 

生保では、協栄生命保険、千代田生命保険が巨額の負債を残して姿を消した。

 

流通業界では、百貨店の「そごう」が破綻した。スーパーのマイカルが途方もない負債で潰れた。

 

製造業でも、退潮が目立った。その象徴は日産だと筆者は思う。フランスのルノーの傘下に入った日産では、人員削減や給与の見直しが進められ多くの従業員が去った。

 

電機関係では、パナソニックプラズマディスプレイが液晶テレビとの競合に敗れて消えた。半導体ではエルピーダメモリが破綻した。エルピーダメモリは日本電気や日立製作所が統合して誕生した“日の丸半導体”で世界的にも大きなシェアがあったが、米国の司法省に訴えられ業績が下降した。

 

三洋電機は、パナソニックに吸収されて消えた。シャープが台湾企業の傘下に入ったことも記憶に新しい。カネボウといえば名門中の名門だが消滅した。

 

名門企業の破綻は枚挙にいとまがない。凍り付くような長引く不況のせいで、屍の山が出来上がった。こうしてみると、ずっと順調だった会社の方が珍しい。筆者にはトヨタ自動車ぐらいしか思い浮かばない。

 

なぜ、こんなに多くの会社が破綻したのだろうか?

 

「不況だから、大手企業が倒産したのか?」あるいは「大手企業が倒産したから、不況になったのか?」

 

「鶏が先か、卵が先か」の議論と同じで因果関係はわからないが、この約20年間はまさに日本株式会社の敗北の歴史だった。

 

倒産した会社の従業員にしてみれば青天の霹靂だっただろう。そのせいで人生が変わってしまったのだ。「大手 男性」の年収が一番落ち込みが大きかったというデータは、そうした経緯を考えると、筆者の腹に落ちるのである。

 

北見 昌朗
北見式賃金研究所所長

 

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日本人の給料

日本人の給料

浜矩子、城繁幸、北見昌朗、坂田拓也、野口悠紀雄 ほか

宝島新書

日本人の平均年収は20年の長きにわたり長期減少が続いている。2000年代には世界経済が伸長して日本の企業の業績も向上したが、給料は上がるどころか、下がり続けた。 日本人の給料減少は先進諸外国と比較すると際立ってくる。…

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