【中小企業の事業承継】自社株の分散を回避し、財産の権利だけ子に移転する方法 (※写真はイメージです/PIXTA)

苦労して会社を軌道に乗せてきた社長も60歳。起業家を志す子どもたちは承継に興味がなく、二人三脚でやってきた取締役も引退を希望。いずれはM&Aを…と考えていますが、いまは夢を持つ子どもたちに最大限メリットを享受させ、なおかつ面倒ごとのリスクになりかねない株式の分散を回避したいと考えています。社長と税理士とコンサルタントのやり取りを通じて、社長の希望を実現する方法を探ります。

子どもたちへの「自社株の暦年贈与」を検討

子どもたちへ自社株を贈与すると、子どもたちは贈与時の自社株の相続税評価額に対して贈与税を納税します。その後、贈与された自社株を子どもたちも木村社長と同時に譲渡すると、子どもたちにも、自社株の譲渡所得に対して20.315%の所得税が課税されます。

 

自社株の譲渡所得等の金額は、譲渡価額(売却金額)から取得費(取得価額)と売却手数料等を差し引いて計算します。

 

たとえば、贈与時の1株あたりの相続税評価額が10万円だと仮定して、50株(相続税評価額は500万円)を子どもに贈与すると、子どもは、約48万の贈与税を納税することになります(特例贈与の税率。その年に自社株以外の財産の贈与がなかったものとして計算)。

 

そして、子どもたちが受贈した50株の自社株を、M&Aによって2000万円で譲渡すると仮定します。このときの子どもたちの自社株の譲渡所得の計算では、自社株の取得費は贈与者の取得費を引き継ぐため、譲渡所得は1950万円となります(木村社長は1株あたり1万円の出資で会社を設立)。譲渡所得に20.315%の税率を掛けると、自社株の所得税は約396万円となります。子どもたちは贈与時に贈与税を納税していますが、自社株の譲渡で子どもたちは約1604万円を得ることになります(贈与税と所得税をあわせて約445万円を子どもは納税)。

 

一方、木村社長がM&Aで自社株を贈与した後に、2000万円を子どもに贈与すると、約585万円の贈与税の納税が必要となり、子どもは差し引き約1415万を得ることになります。また、この場合では、子どもたちの贈与税とは別に、木村社長が自社株譲渡の所得税を納税しています。

 

上記から、M&Aで譲渡する時の自社株の価額が贈与時の相続税評価額より高くなるようであれば、木村社長が子どもたちに自社株を贈与することで、子どもたちには多くの資産を渡してあげられそうです。また、上記は1回だけの贈与で納税額等を計算していますが、暦年贈与で上記の贈与を数回行えば、子たちの納税負担を減らして多くの資産を移転することもできそうです(今後の税制改正によりこの試算が成り立たない可能性があります)。

子どもたちへの自社株贈与で、株式が分散することに!?

泉税理士は暦年贈与について検討したことを木村社長に説明すると、木村社長は暦年贈与を検討して2人の子どもたちへ資産を移転することを検討したいといいます。

 

しかし、1つ課題があります。子どもたちへの暦年贈与を始めれば、少数株主ではあるものの2人の子どもたちも株主となります。子どもたちとはいえ、毎年贈与するたびに子どもたちの株式数は増えていくことになります。

社長「できれば〈株主は自分1人だけ〉にしたい」

株主として2人の子どもたちが株主の権利を行使することもあまり考えられないのですが、木村社長1人が株主だった状況から変わることに対して、木村社長も少し不安を感じています。今後、子どもたちが結婚し、そのあと事故などで突然に亡くなるようなことになれば、子どもたちの株式は配偶者が相続し、配偶者が株主になります。

 

木村社長は、できれば株主は自分だけ1人の状態を続けておきたいと思っています。

 

泉税理士は、木村社長がそのように考えるのも理解できます。そこで、泉税理士の知り合いで事業承継と信託に詳しいコンサルタントから話を聞いてみることを提案してみました。

 

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    一般社団法人民事信託活用支援機構 理事
    株式会社継志舎 代表取締役 

    外資系生命保険会社、日系証券会社、外資系金融機関、信託会社を経て、本機構の立ち上げに参画。金融機関での経験を活かし、企業オーナー等の資産承継対策の信託実務を取り組む。会計事務所と連携した企業オーナーや資産家への金融サービスの提供業務にも経験が豊富である。著書に『信託を活用した ケース別 相続・贈与・事業承継対策』(共著・日本法令)『「危ない」民事信託の見分け方』(共著・日本法令)がある。

    株式会社継志舎
    東京都中央区日本橋兜町11-10 兜町中央ビル402
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    著者紹介

    連載株の渡し方で結果が決まる!中小企業「事業承継」の進め方

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