足首を固定すれば人間も「ホッピング」の動きが可能に
父親 腱の力はどうやって生み出せばいいのですか?
和田 腱をフル活用して力を生むためには、条件があるんです。それは、関節が固まっていることです。
父親 関節を固める? ちょっとイメージがわかないです。
和田 お父さん、まず足首を上下に動かしていただけますか?
父親 はい。
和田 ありがとうございます。これが「足首が動いている」という状態です。
次に足首を動かないように固定していただけますか? 僕が手で足首が伸びるように動かしますので、それに抵抗して絶対に足首が動かないようにしてください。
父親 はい。こうですね……!!
和田 ありがとうございます。バッチリです。これが足首を固めるということです。走りの学校では「足首ロック」と言っています。
では、踵を浮かせたまま足首ロックの状態で、上からリズムよく体重をかけます。これがホッピングと同じ構造を人体で行った動き、「アンクルホップ」です。ちなみに「アンクル」は英語で「足首」って意味です。やってみますよ(トン、トン、トン……)。
父親 すごく高くジャンプしてますね!
和田 いえ、お父さん、この動きのことを[走りの学校]では「ジャンプ」とは言わないのです。
走りの学校では股関節と膝関節の動きが伴う「ジャンプ」と、両関節、そして足首をできるだけ動かさないようにして弾む「ホップ」と、呼び名を分けています。名前を変えることで動きの違いを捉えられるようにしています。「ランニング」と「スプリント」を呼び分けるように。
父親 なるほど。言葉によって人間は認識しますもんね。
和田 はい。同じ飛び上がっている状態でも、「ジャンプ」と「ホップ」は、まったく違う動きなのです。ジャンプはスタートダッシュのときに大切な動き、ホップは最高速度を高める際に大切な動きになります。今はホップを習得しましょう。
父親 スタートダッシュ……ところで和田さん、今気づいたんですけど、スタートダッシュからやらなくていいんですか?
和田 いい質問ですね。普通は「スタートから練習するのでは?」と思いますよね。今まで数々の講習を行わせていただくなかで、スタートダッシュのテクニックを身につけるための前提として、この最高速度を出すスプリントテクニックを身につけることが必要だとわかったんです。
「最高速度を出す練習を1ヵ月ほど行って身体に適応させ、その後スタートダッシュのテクニックを習得する」という過程が最も適しています。なのでスタートダッシュの理論やテクニックは『走り革命理論講座II』でお伝えしているんです。
父親 今から行う練習はスタートダッシュの習得にもつながっていくんですね!
和田 そのとおりです。ジャンプはスタートダッシュに活かせるとして、まずは最高速度を出すために大切なホップですが、お父さん、その場でホップしてみてください。
父親 おお、弾んでる感じがします!
和田 これがホップというテクニックです。
では、試しに、踵を浮かせて足の前面で接地している今の状態を逆にして、つま先側を上げて踵が地面に着くようにして跳んでみてください。
父親 全然跳べません。
和田 はい。これがバネを使える状態と使えない状態の違いです。
父親 なるほど。バネは才能と言われますが、そもそも使いこなせている人とそうでない人がいるのですね。
和田 そのとおりです。ランニングの走りは自分の重心の前に踵から接地するので、棒の力もバネの力も使えないのです。
和田 賢一
走りの学校 校長