なぜ、鉛筆をタテにして真っすぐ落とすと跳ね返るのか
父親 地面反力をもらうテクニックを身につけたら、空中スイッチができる、空中スイッチができたら、接地が短くなってブレーキになる動きが少なくなり速度が上がる。
和田 そのとおりです。そして、それだけではありません。腱が生み出すバネの力は、より短い時間で強い力を発揮できるのです。
次に、地面反力をもらうためのポイントである、腱とバネについて説明させていただきますね。説明後は、そのテクニックを習得するための練習を行っていきましょう。
父親 よろしくお願いします。
和田 お父さん、またまた質問をさせてください。
父親 はい。
和田 鉛筆を机の上に落としてコンコンと弾ませた経験はありますか? もしくはイメージをすることはできるでしょうか?
父親 はい。考え事をしているときは無意識にやってしまいます。なんか、あの弾んで勝手に戻ってくる感じと音が心地よくて。
和田 鉛筆って、筋肉ついてますか?
父親 和田さん、こっちは真面目にやっているんです、変な質問しないでくださいよ。ついていないに決まってるじゃないですか。
和田 では、なんで鉛筆は、勝手に上に弾んで戻ってくるのでしょうか?
父親 え……なんでって……。
和田 鉛筆を横にして同じように机に落としても返ってこないですよね? なぜ縦にしてまっすぐ下に落とすと勝手に跳ね返ってくるのでしょうか?
父親 すみません。何度もやったことはあるのですが、考えたことがなかったです。
和田 安心してください。お父さんだけでなく多くの方がやったことがあるけれど、深く考えたことがないことです。実は、鉛筆の弾み方はスプリントと一緒なんです。
物理的には細かい理由があるのですが、誰にでもわかるように簡単に言うと、〝堅くてまっすぐの棒は弾む〟ということです。
父親 それはなんとなく理解できます。「コンッ」て音がしながら跳ね返ってきます。
和田 そうです。そして、このまっすぐな棒の力と、そこにかかる重さ、そしてそれを堅いバネを通して地面に伝え、大きな力が返ってくるようにできているのが、昔流行ったホッピングというものです。
父親 あー! それ、子どもの頃にやっていました! ピョンピョン弾むおもちゃですよね!? 何回弾むか、友達と勝負したものでした。
和田 その遊びです。
あれはよくできていて、堅くてまっすぐな棒に誰もが持っている体重を短い時間でかけ、それを強いバネに伝えることにより、強い力が地面から跳ね返ってくるのです。
父親 棒とバネ、今考えるとすごい構造ですね。あんな能力がもし私にもあったら、速く走れたのかもしれませんね(笑)。
和田 何をおっしゃいますかお父さん。あのバネの構造は僕たちの身体のなかにあるんですよ。
父親 え、どういうことですか?
和田 説明させてください。
まず、まっすぐな棒は、まっすぐ伸ばした足が棒になりますよね? そして上からまっすぐ落とすと、地面反力をもらって弾みます。でも、それだけでは高く弾むバネにはなりません。バネを簡単に説明すると、①堅くてまっすぐな棒が弾む力と、②腱の力の足し算で生まれるもの、と言うことができます。