(※写真はイメージです/PIXTA)

過去30年間で給与のドン底は2009年(平成21年)でした。ピークの1997年と比べ失われた給与総額はなんと28兆円に達しました。平均年収はピーク時の61万円ダウンしたことになり、家計は厳しくなったはずです。北見式賃金研究所長の北見昌朗氏が過去30年間の給与を検証します。

給与のドン底横ばいは2012年まで続いた

この28兆円は、何に匹敵するだろうか?

 

年次は異なるが、高松(四国)、福岡(九州北部)、熊本(九州南部)、沖縄の給与総額を足しただけでも21兆6610億円(2020年)であり、西日本の広大な地域が沈没したぐらいの喪失だった。

 

いかに大きな喪失だったことか、筆者はデータをみながら今さらながら青ざめる。

 

 

給与を「手取り」まで計算した上で比較する。給与から天引きされた控除額と、手取りの給与総額は次のとおり推移した。

 

1997年

給与総額211兆5080億円(A)

 

厚生年金  10兆3415億円 

健康保険   5兆9000億円

介護保険          0円(制度がなかった)

雇用保険      6458億円

所得税    3兆5013億円

住民税  10兆4275億円

控除総額 30兆8162億円(B)

 

給与総額(A)-控除総額(B)= 手取り総額180兆6917億円(C)

 ↓

2009年

給与総額 182兆8745億円(28兆6334億円減、13.5%減)(A)

 

厚生年金  11兆1204億円

健康保険  5兆9313億円

介護保険    1兆320億円

雇用保険     6397億円         

所得税   2兆2725億円

住民税   12兆4284億円       

控除総額 33兆4243億円(2兆6081億円増、8.5%増)(B)

 

給与総額(A)-控除総額(B)=手取り総額149兆4501億円(31兆2416億円減、17.3%減)(C)


 
このように給与総額、手取り額をみると、いかにひどい状況だったかよくわかる。

 

 

手取りの総額は31兆2416億円もダウンしている。これを何かに例えてみよう。

 

セブンイレブンの国内売上高2兆7849億円(2009年)と比較すると、その11年分に匹敵する。恐ろしいほどの落ち込みだ。ここまで困難な状況が長く続いたら国家も家庭も破綻に追い込まれたことだろう。

 

給与のドン底の時期は、その後も続いた。

 

2011年には東日本大震災が発生した。また、この年は1ドル75円という歴史的な円高になって輸出産業が苦しんだ。

 

ドン底横ばいは、2012年に入っても変わらなかった。2012年3月期決算で、大手家電がそろって過去最大の赤字を計上した。韓国勢などとの価格競争激化や円高で、テレビ事業が不振を極めたためだ。日本の産業界をけん引してきた家電大手の落日ぶりが鮮明となった。

 

基調が変わったのは、2012年の年末に安倍晋三が首相に返り咲いた時だった。

 

北見 昌朗
北見式賃金研究所所長

 

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