共産党大会前は権力闘争が経済、外交に影響か
中国憲法は、「中国の各民族人民は中国共産党の統率的指導のもと……社会主義国家を作り上げるであろう」とされ、三権分立ではなく、すべての権力が中国共産党に集中する。
その共産党の頂点に立つ最高指導部の7人は中国14億人のトップに君臨し絶大な権力を持つとみられ、最高指導部に名を連ねるための権力闘争は熾烈を極めると推察する。
1978~89年にかけて共産党最高指導者であった鄧小平氏らは、最高指導者(党総書記)選出の混乱を回避するため、江沢民氏や胡錦涛氏といった将来の指導者を事前に決定した。
しかし、12年に習近平氏が選出されたときは、事前に最高指導者は決められておらず、現在首相を務める李克強氏も有力候補者であった。また、政治局常務委員の有力候補者であった重慶市トップの薄熙来氏が党大会前に失脚し無期懲役の判決を受けたことからも、当時の権力争いが激しかったとうかがえる。
今年の共産党大会では、習近平総書記は最高指導者の2期10年の任期慣例を覆し、異例の3期目に挑む見通し。また、習近平氏を除く6人の政治局常務委員についても、習氏は習近平派と呼ばれる自身の人脈を昇進させるため画策していよう。
ただ、そうなれば同氏の独裁色が更に強まるため、江沢民派や李克強首相が属す共産主義青年団等はそれを阻止するため策略を巡らしていよう。今年の共産党大会は前回以上に権力闘争が激しい可能性がある。
中国には「声東撃西(東を討つと見せかけて西を討つ)」など、行動の真意が別にあることを示すことわざが多く見受けられる。党内の最高指導部選出に関わる策略が、中国が直面する国内外の混乱とどのように関係しているかは知る由もない。
しかし、指導部を選出した12年にも22年と同様に国内外で混乱があったことから、中国政治と国内外の混乱とが無関係とはいい難く、むしろ密接に関わっていると推測される。
中国本土市場の本格反発は共産党大会後になろう
22年の経済や外交状況が12年と類似していることから、22年の株式市場の動向も12年に類似する可能性があろう。
12年の株式市場を見ると、香港市場は海外市場の上昇を受けて年央から上昇。一方、本土市場は景気減速を嫌気し株価は下落を続け、11月の共産党大会後に景気回復もあり反発した。
実際、景気は同年夏ごろには底打ちしたものの、株価の反発が遅れた背景としては、中国を熟知する中国人投資家が共産党大会の開催に伴う政治的混乱を嫌気した可能性がある。
22年の景気は、都市封鎖のあった4月を大底に持ち直し傾向にあるが、未だ持ち直しの勢いは弱い。このため、政府は1.5兆元の特別債の前倒し発行によりインフラ投資を拡大し、住宅販売支援のため住宅取引規制の一段の緩和や利下げ等を進めると見込まれる。
電力不足問題は8月末にはほぼ解消。また、新築住宅販売はすでに下げ止まりつつあり、新型コロナの感染が落ち着いてくれば、景気回復が顕在化しよう。今年も党大会後に株価が本格的に上昇へ転じる可能性は高そうだ。
白岩 千幸
東洋証券株式会社 投資情報部
シニア・エコノミスト/ストラテジスト
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