ロシアが払う莫大な戦費…戦争が起きるか否かは経済力で決まる

戦争にはいくらお金がかかるのか①

ロシアが払う莫大な戦費…戦争が起きるか否かは経済力で決まる
(※写真はイメージです/PIXTA)

戦争の多くは経済的な対立の延長線上で発生しています。戦争の勝敗のカギを握るのも経済力です。戦争とお金との間には、切っても切り離せない密接なつながりがあるのです。経済評論家の加谷珪一氏が著書『戦争の値段 教養として身につけておきたい戦争と経済の本質』(祥伝社黄金文庫)で解説します。

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日本は20年間、軍事費が増加していない

■日本の軍事支出が相対的に減っている理由

 

中国をはじめとするアジア各国が軍事支出を年々増大させる一方、日本は過去20年間、ほとんど軍事費(防衛費)が変わっていません。それには2つの理由があります。

 

1つは、日本政府が防衛費に対して上限を設定する政策を長く続けてきたこと。もう1つは、日本が過去20年間まったく経済成長を実現していないことです。

 

日本では、1976年に三木内閣が、防衛費をGDP(当時はGNP)の1%以内に収めるという閣議決定を行い、それ以後、防衛費は、常にGDPの1%以内になるよう制限されてきました。1986年に中曽根内閣がこの制限を撤廃し「総額明示方式」と呼ばれる防衛予算策定方式を導入しましたが、実質的にはGDP1%枠が続いている状況です。

 

この制限に加え、日本が経済成長をまったく実現できていないため、相対的な軍事費はむしろ縮小するという状況になっています。

 

過去20年間で、米国のGDPは2.4倍に、ドイツは1.8倍、ロシアは6.7倍、中国に至っては18.4倍に成長しました。同じ期間における日本のGDPはほぼ横ばいという状況です。GDPに対する軍事支出の比率が同じでも、各国はGDPを大きく増大させていますから、日本の軍事費は相対的に小さくなってしまったわけです。

 

1994年時点において、ドイツの軍事費は日本の8割程度しかありませんでしたが、現在では日本を上回る支出となっています。しかしドイツにおける軍事費のGDP比はむしろ以前より低下しています。この差は、順調に経済成長できた諸外国と経済に躓つまずいた日本の差と考えてよいでしょう。

 

日本はグローバルな競争社会に背を向け、経済成長を犠牲にする選択をしてきました。もし日本が米国など諸外国と同レベルの経済成長を実現し、国際的な平均水準であるGDP比2%を防衛費にかけていたと仮定すると、現在の防衛費は中国とほぼ同じ水準になります。

 

この事実1つとっても、経済と戦争を分けて考えることができないということがよくわかります。

 

※各種統計の数字は基本的に書籍が出版された2016年当時のものです。

 

加谷 珪一
経済評論家

 

本連載は加谷珪一氏の著書『戦争の値段 教養として身につけておきたい戦争と経済の本質』((祥伝社黄金文庫)より一部を抜粋し、再編集したものです。基本的に書籍が出版された2016年当時の記述となっており、各種統計の数字は2016年時点のものです。国際情勢が変化し、追記が必要な部分については、著者注として補足しています。

戦争の値段――教養として身につけておきたい戦争と経済の本質

戦争の値段――教養として身につけておきたい戦争と経済の本質

加谷 珪一

祥伝社

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