「おかげで良い部屋に巡り合えた」と思ってほしい
私が賃貸住宅情報誌を制作する際にいちばんこだわったのは、「部屋探しをする人にとって役立つ情報誌であること」です。「アパートニュース」を購入した人が「買って良かった」「これのおかげで良い部屋と巡り合えた」と思ってくれる商品にしたいと思いました。
具体的に誌面作りで心掛けたのは次の5つと2つの誓約です。まず本誌を購入する顧客への誓約が5つあります。
1 駅バス停からの所要時間は80メートルを徒歩1分とする
2 間取図は正確に描く
3 築年数に嘘があってはならない
4 家賃など入居費用の数字にミスがあってはいけない
5 お客さまに信用・信頼される、「アパートニュース」の日正を築いていこう
①所要時間
賃貸住宅情報誌に「〇〇駅から徒歩3分」と書かれていても実際に歩いてみると5分以上かかったという経験がある人もいるかもしれません。これは駅から近い物件のほうが人気があって早く入居が決まりやすいので、業者によっては実際より所要時間を短めに見積る傾向があるためです。
「アパートニュース」では最寄駅から物件までの所要時間について正確さを期すため、「不動産の表示に関する公正競争規約施行規則」で定められた「80メートルを1分」を厳守しました。
80メートルを1分にするという基準は、女性がハイヒールで歩いたときの所要時間が基になっています。不動産業者によって基準がまちまちであるのを見かねた公正取引委員会が1963年に定めたのですが、その後も守らない業者が多く、部屋探しをする人たちを混乱させていたのです。
②間取図
部屋探しをしている人に正しいイメージを伝えることを意識しました。部屋探しをしている人はみんな新しい住まいに夢をもっているものです。それを裏切ることがないように、また現地に行かなくても誌面だけでおおよそのイメージがつかめるように配慮しました。
「アパートニュース」以前は新聞の三行広告で部屋を探していたため、ビジュアルが入ることは大きな進歩といえます。
③築年数
築年数も正確さを期しました。新築から年数が経つと一般的に物件は価値が下がるのです。その分、家賃を下げるなどの対策をして集客しますが、家賃が下がるとオーナーや仲介業者は収入が減ってしまいます。それで築年数を浅めに記載したいという気持ちが働き、数字をごまかす業者が多くいました。
しかし、築年数を浅く偽るとのちのちのトラブルの元になります。築浅だと思って借りたのに設備が壊れた、建付けに経年劣化らしき歪みが出ているなどとなれば、信用問題に発展して結局自分で自分の首を絞めることになります。
④数字のミス
悪気がなくてもうっかり起こることがあるので「人間はミスをするもの」と思って見直しをすることが大事です。
活字は一度世間に出てしまうとあとから修正することはできません。私も校正作業では「どこかにミスがある」という前提に立って、それを見つけるつもりでしつこいほどチェックを繰り返しました。
⑤信用・信頼
1~4の誓約を守った結果として到達できるものです。誠実な誌面作りをコツコツと積み重ねることで、「部屋を借りるならやっぱり『アパートニュース』だよね」と人々に選んでもらえるブランドになっていけると考えました。
今となっては5つとも当たり前のコンプライアンスですが、今から50年前はそうではありませんでした。賃貸仲介業の黎明期は何かにつけてルールが甘く混沌としていたのです。
だからこそ「アパートニュース」はルールを徹底し、公明正大であることを自身のテーマとして差別化しました。