ブラックボックス化していた広告宣伝に、メスを…
APN(アパートニュース)では雑誌制作以外にも広告宣伝全般を業務としていたため、雑誌制作費削減の延長でそれ以外の広告宣伝にも思い切ってメスを入れました。
1978年からテレビCMを始めていましたが出稿量は少なく、あまり予算も労力も割いてはいませんでした。その他の広告媒体としては物件に掲示する「入居者募集」の看板と、野立て看板や駅看板が主体でした。それ以外には、支店が自主的に作る看板がありましたが、これが悩みの種でした。支店長が勝手にデザインした品のないピンク色の看板が本社の知らない間に掲出されているなど、無法化していたためです。
CMや看板というのは会社のイメージを左右する影響力があり、綿密な戦略のもと統一したイメージで制作されなければなりません。そこで、次の4つに広告宣伝を絞り、それ以外のものは契約を解除して整理していきました。
1 テレビCM
2 「アパートニュース」の出版→のちにウェブ制作・広告に移行
3 物件に付ける入居者募集看板
4 道路に面した支店の主看板と袖看板、並びに目立つ場所の支店屋上広告塔
支店による勝手な看板等の掲出を防止する対策として1988年に「支店広告宣伝規約」を作成し、無許可での広告宣伝物の制作や掲出契約ができないようにルール化しました。すでに数多く掲出されていた野立て看板や駅の看板は、支店長や上長と相談しながら1つずつ解約をして最終的にはゼロを目指しました。看板の多くは3年契約であるため、こちらが止めようと思っても一方的にはできません。仕方なく3年かけて契約満了を待ったものもあります。
広告宣伝費は、種類も金額も膨らんでいく傾向がある
1988年以降はテレビCMの出稿量を増やしていき、途中からはウェブ制作・広告費も増やしていきましたが、広告というのは意図しない間にその種類も金額も膨らんでいく傾向があります。広告費がかさんできて「これではいけない」と気づいたときには「時すでに遅し」で、収拾が付かなくなっていることも多いのです。広告は会社利益を増やすために打つもので、広告費が会社利益を侵食するようでは本末転倒です。広告物の選択と集中を意識して統制していくことが重要です。
選択と集中と同時に意識すべきことは、広告物の内容の統一を図ることです。支店の建物に掲出する主看板や袖看板は色とデザインを統一し、同じく物件の募集看板も青と白のものに統一しました。そうすることによって愛知・岐阜・三重のどこでも同じ看板が目に付くことになり、人々に認知されていきます。
テレビCMはタレント起用をした時期もありましたが、最終的には人形を使いました。タレントは上手に起用すればインパクトがありますが、人気の浮き沈みが激しかったりスキャンダルの影響を受けたりするリスクがあります。タレントのイメージが企業イメージに影響してしまうためリスクが大きいのです。
紆余曲折はありましたが、限りある広告宣伝費をいかに有効活用するかを追求したことや、デザインなどの統制が進んだことで、無駄のない広告宣伝を打つノウハウが出来上がっていきました。
現在はスマートフォンやタブレットにも対応し、インスタグラムやツイッターといったSNSの公式アカウントを活用しての情報発信にも力を入れています。一例としては、住みたい街探しの参考にしてもらうために愛知・岐阜・三重のお勧めスポットや生活情報をSNSで紹介したりしています。
SNSでの発信は専門のスタッフを採用しなくても社員でできるため、低コストでPR効果の高い宣伝広告コンテンツになり得ます。リアルタイムで迅速に情報発信できる点や、フォローやリツイートなどで反響がすぐに分かる点も魅力です。
加治佐 健二
株式会社ニッショー 代表取締役社長