中途採用面接のよくある質問と模範回答例をチェック
中高年齢者に対しての面接者側の目的は大きく三項目だと解説しましたが、その目的にそった回答が必要です。中途採用の面接では必ず聞かれる質問というのがあります。以下にその質問例と模範回答例、回答のポイントを紹介しておきましょう。
質問①「あなたのご経歴を聞かせてください」
<回答例>
「私の職歴は学校卒業後、通算で32年になります。職歴を大別すると3つになります。第一は工程管理で、12年間従事し、私の職歴ではもっとも長い職場でした。第二は品質管理で、10年間従事しました。特にこのなかでは検査工程部門が長く、社内では最終検査のプロといわれてきました。第三は最近までの10年間で、工場長として工場全体の運営管理業務に従事してきました。これが退社まで続きました。したがって御社に対しては管理職として工場管理分野で貢献できると確信しますが、担当者としても製品XXの検査に関しては自信があります」
■ポイント:1~2分程度で、簡潔に要旨を述べる
面接者側は、あなたの経歴について提出した履歴書や職務経歴書を事前に読んでだいたいは知っているはずです。そうでなければ面接に至っていません。したがって学校卒業後の経歴をだらだらと喋るのは望ましくありません。時間の目安としては1~2分程度で、できれば職能別に整理した経歴を3~5項目に大別して、簡潔に要旨を述べるのがコツです。
質問②「あなたはなぜ会社をやめたのですか」
<回答例>
「32年間、工場管理一筋でやってまいりましたが、私が心血を注いできた主力工場が業績不振で極端な業務縮小が決定されました。会社からは別のポジションの提示もありましたが、やはりいままでに培ってきた専門知識と業務経験を他社でも活かしたく思い、同時に発表された早期退職優遇制度を利用して退社し、求職活動をしております。精神的にも肉体的にも、まだまだやれる自信がありますので、最後の職業人生として御社で挑戦させていただきたく、応募いたしました」
■ポイント:「前職に対して後ろ向き」な印象を与える回答は絶対NG
退社の経緯はどうであれ、絶対に避けたいのは、やめさせられた、あるいは前の会社とは合わなかった、嫌だったという印象を与えることです。自分の意思で退社したことを述べ、いままでに培った経験と知識を別会社で活かすべく挑戦していることを強調すべきです。常に前向きの姿勢を見せることが大切です。最近では会社のリストラクチャリングによる部門閉鎖や縮小はよくあるケースであり、その結果、やめたといってもその人の能力に関係しているととられることはなく、けっしてマイナス要因になりません。
質問③「あなたはわが社にどんなふうに寄与できますか」
<回答例>
「職務経歴書はお読みいただけたと思いますが、物流業務全般についての知識と経験があり、自信もありますので、できれば御社の物流部門の仕事に従事させていただければと考えています。具体的な貢献領域につきましては、必要があれば答えさせていただきますが、いかがいたしましょうか」(「どうぞ」といわれたら、職務経歴書の目標欄に書いた3項目を2分程度で簡潔に述べます)
■ポイント:「私にやらせていただけるなら…」と貢献できる領域のみを回答
面接で一番肝心なポイントであり、これを聞いてもらうために面接があるといっても過言ではありません。しかしここで非常に大切なことは、張り切りすぎていきなり細々とした職務の話をしないことで、まず貢献できる領域のみを希望として述べるようにします。訴求が強すぎて、自慢たらしく聞こえたり、反発を招いたりしないように注意します。当然、面接者側はその詳細を知りたいわけですから、貢献領域についての具体的な内容説明を求めてきます。その場合も「私にやらせていただけるなら」と断わってから、話すようにします。具体的な貢献については数字を駆使して、各項目1~2分以内で、一つひとつについて簡潔に説明するようにします。
質問④「給料はどれくらい必要ですか。いままでどれくらいもらっていましたか」
<回答例>
「私が応募いたしましたのは、御社でまず貢献させていただける職位を得たいからであり、給与ではありません。ただ家族もあり給与ベースには無関心ではありませんので、提出いたしました履歴書の私の年齢と職務経験に見合った御社の給与水準をご提示いただけないでしょうか。それを前向きに検討させていただくつもりです」
■ポイント:まずは「その会社の給与水準」を尋ねる
簡単なようで、被面接者が一番多く陥る間違いのひとつがこの質問です。面接者側は人材を採用するのに当然、予算があり、その会社独自の給与水準とカーブがあります。それを承知のうえでこういった質問をしてくるわけで、自社の基準にもとづいて被面接者の人材価値、市場価値の値踏みをしているわけです。
野球やサッカーなどプロスポーツの選手ではっきりした記録が残っていても、契約更改時には相当もめます。通常のビジネスパーソンなら前の会社でもらっていた給与のみが唯一の示せる金額ですが、それはその会社での過去の貢献度を加味した基準であり、その人の市場価値ということはできません。
したがって日本では、自己の本当の市場価値を金額で示せる人はまずいません。その意味では、こういった金額面でのやりとりをすること自体無理があるわけで、回答例にあるように、ともかく応募会社の給与水準を提示することをお願いし、それで生活がやっていけるかを考え、自分が納得できる水準なら受諾し、低すぎればお断わりするということになります。とりあえず内定をもらうことに全力をあげる必要があります。
ただし参考までに、前の会社での給与を教えてほしいといわれたにもかかわらず、答えないのは相手に対し失礼にもなりますから、先のようなやりとりをして、さらに「どれくらいもらっていましたか」という質問があれば、「源泉徴収票が手元にないので正確な数字ではありませんが、参考までに申し上げればおよそXX万円です」といえばよいでしょう。
楠山 精彦
関西キャリアデザイン研究所 代表
和田 まり子
NPO法人キャリアスイッチ 理事長