(※写真はイメージです/PIXTA)

40歳以上の人材が内定を獲得するには、どうすればよいのでしょうか? 自己分析や提出書類の作り方も重要ですが、やはり決め手はその先に待ち受ける「面接」です。楠山精彦氏・和田まり子氏の著書『40歳からのキャリアチェンジ[第2版]』(経団連出版)より、内定獲得につなげる「面接対応法」について見ていきましょう。面接官がどこを見ているのかを押さえ、転職成功のためのアプローチを分析します。

「新卒の採用面接」と「中高年層の採用面接」の違い

書店の店頭に並ぶ面接に関する解説書は、新卒を対象としたものが多いため、ここでは中高年層を対象として、今日の時代にふさわしい面接の受け方、望ましい面接時の応対について考えます。

 

企業環境が激変するなかで、面接自体も目的や意味が変わってきています。個々人の特性やオンリーワンを優先するようになったため、以前にも増して即戦力であることが要求され、実績を残せる人材かどうかが、業種や職種も含めてピンポイントで選択される時代になっています。欧米スタイルの面接になってきたといってもよいでしょう。

 

面接は、新卒の場合は全応募者を比較して序列をつける、上位から順に採用していくという相対評価で行なわれますが、中高年層の場合は会社のニーズや期待と応募者の能力を照らして判定する絶対評価です。つまり中高年層のほとんどのケースでは、求人側の採用決定権者と応募者との面談による差しの交渉で、双方が対等の立場で、またフェアに折衝が行なわれることになります。面接者と被面接者といった上下関係を想起するようなものではないので、面接される人は自分という商品をいかに売り込むかという気持ちで臨むことが必要です。

面接官が見ているのはココ

中高年齢者に対する面接の目的は大きく次の三つにまとめることができます。

 

【①即戦力としてすぐ役立つか】

第一は、即戦力として採用後すぐに役立つかどうかです。

 

優秀で大きな可能性を秘めている人でも、入社後、長期間研修や教育をしなければならないようでは採用の対象となりません。企業は、募集している職務(職種、職位)に対して、採用の時点ですでに十分な能力、知識、経験、実績などが備わっているかどうかをピンポイントで判断します。したがって判断にあたって面接者側に求められるのは、応募者が適材適所で、即戦力であるかを見抜く洞察力になります。面接にあたる人事担当者も、要求部署のニーズに合致しないミスマッチの人材を選べば責任問題となるので、これまで以上にきめ細かい社内の情報収集を行ない、判断能力を養う必要性が出てきています。

 

一方、面接される側は、面接に際して、自分という商品、特に自分がもっている能力、知識、経験、実績などにどういう特徴があり、応募会社にとってどういう価値の提供ができ、貢献ができるかをまとめておき、その場で的確に表現できるようにしておく必要があります。つまり自分に任せてもらえるなら、必ずその会社にとって結果が出せる、業績の向上に結びつけられる理由とその自信を証明することが求められます。

 

【②組織に同化する力があるか】

第二は、組織同化力があるかどうかです。

 

どんなに能力があり、即戦力となる人材であっても、別の組織で長年過ごしてきた人には、その会社の社風や仕事のやり方が身についており、なかなか新しい組織になじまないこともあります。なにかにつけ、すぐ「前の会社では」などというようでは仕事になりません。面接者側は人間としての幅があるか、フレキシビリティがあるかなどを評価することになります。

 

面接される側からみれば、組織同化力があるかどうかは実際に入社してみないことには判断が困難な事柄で、簡単に決めつけられては困るといいたくなりますが、ただプロの面接官はもちろん、だれでも第一印象として、この人は感じがよいとか、他の人と一緒になってやれるかどうかぐらいはすぐわかるものであり、日ごろから暗い印象を感じさせないように明るく振る舞う訓練をしておくべきです。また人間関係で苦手意識をもたないよう心がけておくことも必要です。

 

実際、いままでの会社生活をいったん忘れて、新しい会社に挑戦するための精神的な準備が大切です。面接に際しては、応募者の過去の会社に対するこだわり、懐かしむ度合いが強いかどうか、何度も質問を繰り返して真意を探ろうと試みます。「きょうの自分があるのは、前の会社のおかげです」といった表現は奥ゆかしいとはいえますが、前の会社について長時間話す人は敬遠されます。

 

一方、趣味についての質問から、その人のつき合いの幅と深さなどについて判断する場合も多いものです。したがって趣味に関して最低でも十五分くらいは話せる話題を準備しておくとよいでしょう。趣味の話から面接官と意気投合し、採用に至る人もいます。

 

【③大切なのは健康と前向きのやる気】

第三は、健康でやる気があるかどうかです。

 

中高年層の入社には、必ず詳細な健康診断書の提出が求められます。採用する側とすれば、高年齢になればなるほど、持病の有無や心身の健康状態は大きな関心事です。優秀な人材でも健康でない人は敬遠されます。

 

やる気については、過去の実績を強調することでそれを訴える人がいますが、今後、会社でやれるかどうかが問われているのであり、面接者はそれをどういった形で明らかにしてくれるのかを期待している点を忘れないでください。

 

面接時に自分がどれほど健康で、やる気があるかをいかに訴求するかについて、健康診断書は当然のこととして、私が過去に面接した人のなかには、日記を持参し、これが私の日常の行動特性ですと提示した人がいました。そういうビジュアルなものを準備して、自分の健康度とやる気をアピールするのも一法でしょう。たとえばトレーニングジムでの走破記録リスト、水泳記録リストなどを持参することが考えられます。そうしたものがない人は率直に、「毎日のウォーキングを習慣化しています」というように答えてもよいでしょう。

 

一方、いままでの就労スタイルから年齢相応に落ち着いて、淡々と面接の応対をする人がいますが、これは逆効果です。面接に際しては初心に戻って、一から肉体的、精神的限界に挑戦するぐらいの覇気とやる気を態度で示してほしいものです。

 

またこれまでに面接の機会が何回もあったにもかかわらず、通勤がむずかしい、職種が多少異なる、給料が安すぎてやっていけない等々、自分が受け入れられる条件とかけ離れているため、せっかくの機会なのに面接を見送ったり、辞退したりしている人が結構いるのではないでしょうか。そういう人には考え方をぜひ変えていただきたいものです。希望する内容と条件面で多少違っても、とりあえず挑戦してみることが必要です。過去に私が就職支援した方々のうち何十人もが募集要項と違う職務に挑戦し、採用された実績があります。

「面接してくれる会社」に挑戦することも大切

これまでの求人は欠員補充が中心でした。そしていまでも求人広告のほとんどは欠員の補充で、中高年層の人が応募しても、組織ではこれまでのように教育してくれません。たまたま適材適所と判断されて採用されても、実質的に仕事がこなせないことになります。だからこそ募集要項の文言に一喜一憂するのでなく、面接してくれる会社があれば、多少条件が異なっても挑戦してみるべきなのです。

 

募集要項とはまったく異なる条件で転職に成功した人をみると、ほとんどのケースで経営トップとの面接の機会を得ています。トップの構想段階の領域に入り込むのがポイントです。「いま経営陣で検討しているあのプロジェクトのリーダーに適格だ」「半年後にスタートするあの仕事を手伝ってもらえるとありがたい」と思わせることができれば、道は開けてくるのです。

 

潜在市場に挑戦すること、少しでもきっかけがあれば常に前向きになることが大切であり、それがチャンスをつかむ唯一の方法です。

 

仮にそのような姿勢で応募した結果、よい条件が引き出せなかったとしても、時間と交通費が無駄だったなどとはけっしてとらえないことです。面接のトレーニングをさせてもらったと考えれば、その面接は必ず次回に活かされます。

 

ここまで、中高年齢者に対しての面接者側の目的は大きく三項目だと解説しましたが、実際の面接ではその目的にそった回答が必要です。次回は、中途採用の面接で「よくある質問」とその「模範解答例」を見ていきましょう。

 

 

楠山 精彦

関西キャリアデザイン研究所 代表

 

和田 まり子

NPO法人キャリアスイッチ 理事長

 

※本連載は、楠山精彦氏・和田まり子氏著、NPO法人キャリアスイッチ編『40歳からのキャリアチェンジ[第2版]―充実した人生を送るための求職・転職術』(経団連出版)より一部を抜粋し、再編集したものです。

40歳からのキャリアチェンジ[第2版]―充実した人生を送るための求職・転職術

40歳からのキャリアチェンジ[第2版]―充実した人生を送るための求職・転職術

著:楠山 精彦
著:和田 まり子
編著:NPO法人キャリアスイッチ

経団連出版

●自己分析の方法がわかる ●自分の市場価値を知る ●「やりたい仕事」「満足できる仕事」をつかむ! ●ミドルシニアの再就職を成功に導くポイントとは? 近年、40歳代以上のシニア・ミドル世代を即戦力として採用する企…

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