知識量が増えるほどアイデアが湧き出る
冒頭の製品のアイデアの問題では、考えていただいた方にはお手間を取らせてしまって申し訳ありません。しかしこれこそ、新しいアイデアの生み出し方を端的に体感できる方法だというのをご理解いただきたいと思います(もし、素晴らしい製品のアイデアが浮かんだという方は、ぜひ特許出願を)。
情報や知識は、別々の状況やタイミングで頭の中に入ってきます。そして、ばらばらに散らばって存在しています。そのばらばらの情報同士が、あるとき何らかの化学反応を起こして新しい価値を持つアイデアを生み出すのです。このことは、私自身が実感しています。
記憶のトレーニングとは、言い換えるとイメージ操作のトレーニングなのです。頭の中でイメージを浮かべるということから始まって、そのイメージを大きくしたり、小さくしたり、または、数を多くしてみたり、回転させてみたり、動かしてみたりします。ほかにも、皆さんに取り組んでいただいたように、別々のものを組み合わせてどうなるかを想像してみるといった具合です。
つまり、イメージ操作のアプローチ度合いによって記憶も強化されるということなのですが、見方を変えると「アイデア創出のトレーニング」でもあるのだと思います。こういったトレーニングを何年も続けてきた結果、自覚できるほど閃きの数が圧倒的に増えました。ちなみに、私の場合はシャワーを浴びているときに一番アイデアが浮かびます。
ここまでアイデアについての話をしてきましたが、これは思考力に置き換えてみても成り立つことです。
近年、世の中的には「考える力」を重視する傾向になってきたのは間違いありません。暗記する力は軽視され、情報はインターネットなどから検索できればいいという傾向にあります。私も、考える力を伸ばすというのは大賛成です。AIの時代だからこそ、人間の思考力の重要性はますます高くなっていくというようにもいわれています。
しかし、実はこれも、先のアイデア創出のメカニズムと通底しているのだと思います。つまり、考える力は、果たして頭の中に何もない状態で養えるのかということです。多分、皆さんも、直感で「養えないだろう」と思うのではないでしょうか。
思考力も、既知の情報の組み合わせから生み出されるものです。その情報がたくさん、しかも、有機的に絡み合っている知識の枠組みのようなものが充実しているほうが、思考力を養うためにも有利に働くことは明らかではないでしょうか。
その充実とは何を表しているかというと、頭の中の知識の量にほかなりません。
そして、知識の量を増やすために必要なのが「記憶能力」ということになります。
覚えたものをそのままの形でしか使えないのだとしたら、人間の記憶の価値というものはそれほど高くないかもしれません。しかし、記憶した知識を組み合わせて新しい価値のあるものを生み出せるところに、人間の記憶の価値があるのだと思います。
皆さんも、イメージを使ってたくさん知識を頭に入れて、そこから素晴らしいアウトプットを生み出してください。
池田 義博
記憶力日本選手権大会最多優勝者(6回)
世界記憶力グランドマスター
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