認知症患者の老々介護…「家をバリアフリーに改装したい」と言う夫を医師が“止めた”ワケ (※写真はイメージです/PIXTA)

「まだ大丈夫と思いたい。でも、知っておけば準備できる。」高齢者認知症外来・訪問診療を長年行ってきた専門医・近藤靖子氏は、書籍『認知症のリアル 時をかけるおばあさんたち』のなかで「高齢者世帯の認知症介護」について解説しています。

「夫が妻のケア」…ことがうまく運ばないケースの理由

男性は、これまでの人生でも家庭外での仕事が主で、家で家族の世話をするのは慣れていないことが多々あります。もちろん、家事の得意な男性もいますし、上手に介護サービスを利用してうまく生活を回している方々もいらっしゃいます。

 

問題となるのは、奥さんが認知症になり、しかも自分が世話する羽目になることを想像もせず、認知症や介護の知識もなく、現実を前にしてどうして良いかわからないご主人たちです。

 

彼らは料理や掃除・洗濯などの家事は何とかこなせますが、奥さんの認知症が進行していくのを呆然と眺め、どうにか良くならないだろうか、と願っています。奥さんが訳のわからないことを言い出すと、そのたびにショックを受けて立ち直れないほどです。

 

一方、責任感は強く、子供達には負担をかけたくないので、自分で何とかしようと悲壮な決意をします。

 

先日このようなご主人に、「家をバリアフリーに改装して、今後介護がしやすいようにしようかと思っています」と相談されたので、それは止めるようにとアドバイスしました。一人で奥さんの介護をすべて担わず、デイやショートなどのサービスを取り入れる、長期的には施設入居も視野に入れることを提案しました。ご主人も持病があって、この先体力的にも介護が続けられるかどうかわかりません。

 

「もしご主人が先に亡くなったら、奥さんはそれこそ困るでしょう。ケアはプロに任せていくようにして、自分の人生をもっと考えて下さい」

 

と話しました。

 

その次の診察日には娘さんも同席され、「先生に今後のアドバイスをしてもらって助かりました。父も私の言うことは聞かないものですから。私も、母の下の世話が必要になったら施設入居が必要だと思います」と感謝されました。とは言っても、私の実の父親も私の言うことはなかなか聞いてくれませんが。

 

 

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近藤 靖子

和歌山県和歌山市に生まれる。京都大学医学部および同大学院卒。 医療に関しては麻酔科、眼科、内科、神経内科、老年内科の診療に従事。1994年家族と共に渡米し、オハイオ州クリーブランドのクリーブランドクリニックにて医学研究を行う。 その後、ニューヨーク州ニューヨーク市のマウントサイナイ医科大学、テキサス州ヒューストンのMDアンダーソンがんセンターにて医学研究に従事。 2006年末に帰国し、2008年千葉県佐倉市にさくらホームクリニックを夫と共に開院し、主に高齢者医療を行う。

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    本記事は幻冬舎ゴールドライフオンラインの連載の書籍『認知症のリアル 時をかけるおばあさんたち』(幻冬舎MC)より一部を抜粋したものです。最新の法令等には対応していない場合がございますので、あらかじめご了承ください。

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