(※写真はイメージです/PIXTA)

「まだ大丈夫と思いたい。でも、知っておけば準備できる。」高齢者認知症外来・訪問診療を長年行ってきた専門医・近藤靖子氏は、書籍『認知症のリアル 時をかけるおばあさんたち』のなかで「高齢者世帯の認知症介護」について解説しています。

高齢者世帯の認知症介護

高齢者世帯で暮らしていると、当たり前のことですが2人ともさらに歳を取り、身体が衰えてきます。中高年の人でも、若いころの自分と比べると年々身体の衰えを感じると思いますが、高齢者の衰えの速さはその比ではありません。

 

場合によっては半年や1年で、自転車に乗っていた人が歩くのも困難になったり、急に物忘れや認知症が進んだりします。そして、足腰の衰えや内臓疾患の進行などで日常的な生活機能が損なわれてくると、「老老介護」や「認認介護」と呼ばれる状態になってきます。

 

夫婦の片方に介護が必要になると、必然的にもう片方が手助けをすることになります。

 

圧倒的に多いのは、奥さんがご主人を介護する場合です。一般的に奥さんのほうが年下であることが多く、また女性のほうが同じ年齢でも心身ともに元気なことが多いことがその理由でしょう。そして、女性はこれまでの人生で、大抵家族や子供の面倒を見てきているので、ご主人の介護もあまり違和感なくできることが多いです。

 

ケアマネとも相談しながら、デイサービスやショートステイなども取り入れ、上手にケアプランを遂行させ、しかも自分のやりたいことをできる時間も持ちます。ご主人に対しては結構厳しい面もあり、リハビリ主体のデイサービスに参加させたり、運動機能が衰えないようにはっぱをかけたりします。

 

このように涙ぐましい奥さんの支えがあっても、やはり2人ともさらに衰えてきます。もし、ご主人が身体的にだけ衰えるのであれば、車いすからベッド上へとケアを適応させていくのも比較的スムーズです。

 

けれどもご主人の認知症が中等度以上に進行してしまうと、精神的にも介護の負担が重くなります。例えば、理解力が低下してこちらの言うことがわからなくなる上に、同じことを何度も何度も繰り返して言ったり聞いたりし、それが一日中繰り返されるようになったら……。さらに暴言や暴力が見られるようになると、介護がとても困難になります。

 

また、逆に奥さんが事故や転倒、急病で入院や手術が必要になったりすると、一挙に介護できなくなります。そのような場合には、一時的には介護が困難になりますが、女性の方々は現実を受け入れ、対処する術を心得ていることが多いので、大抵大丈夫です。

 

子供やケアマネ、かかりつけ医などに相談して、ご主人を施設に入れたり、ケアサービスを増やしたりして何とか乗り越えます。

 

ところが、ご主人が奥さんのケアを主に担う場合には、このようにことがうまく運ばないことがあります。

次ページ「夫が妻のケア」…ことがうまく運ばないケースの理由

本記事は幻冬舎ゴールドライフオンラインの連載の書籍『認知症のリアル 時をかけるおばあさんたち』(幻冬舎MC)より一部を抜粋したものです。最新の法令等には対応していない場合がございますので、あらかじめご了承ください。

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