(※写真はイメージです/PIXTA)

「まだ大丈夫と思いたい。でも、知っておけば準備できる。」高齢者認知症外来・訪問診療を長年行ってきた専門医・近藤靖子氏は、書籍『認知症のリアル 時をかけるおばあさんたち』のなかで「廃用症候群」と「四肢の拘縮」について解説しています。

認知症の最終段階…「廃用症候群」と「四肢の拘縮」

アルツハイマー型認知症が進行し最終段階になると、発語がほとんどなくなり、自分で歩いたり座った姿勢を保つこともできなくなります。そのころになると、手や脚の関節が固くなり、拘縮と言われる状態になることがしばしば見られます。

 

拘縮すると自分で手足が動かせないだけではなく、ほかの人が動かすのも困難になります。この段階になると日常生活全般に全介助が必要になるわけですが、拘縮があると、介護者によるベッドから車いすへの移乗などが困難になってきます。

 

アルツハイマー型認知症の国際的進行度を示すFASTという分類によると、最終段階は7番目のステージ7と呼ばれ、さらにaからfまでの亜段階に分けられています。

 

ステージ7aでは言語能力が低下し、5〜6語までの言葉が発せられるのみになります。ステージ7bでは、語彙がただ1語のみになります。ステージ7cでは歩行能力が失われ、ステージ7dでは座位が保てなくなります。そしてステージ7eでは笑うこともできなくなり、ステージ7fの昏迷および昏睡という意識低下状態に至ります。

 

認知症が進行して寝たきりの状態になると、数ヵ月ほどで拘縮が出現してきます。外国の統計によると、7aや7bの段階のアルツハイマー型認知症患者の40%に拘縮を認め、7d以降では95%までに上るそうです※1

 

体全体の姿勢としては、膝や肘が曲がり、手首も屈曲し、手のひらも丸く握るような状態となり、胎児の姿勢に似てきます。また、神経反射でも、新生児にしか見られない反射が出てきたりします。いわゆる「幼児返り」のような状態になるわけです。

 

大局的に見ると、人間がこの世に生を受けて成長し大人になって、今度は次第に衰え、最終的には土に還るという過程でしょうか。

 

認知症以外でも、いろいろな原因で歩いたり座れなくなって寝たきりになると、「廃用症候群」と呼ばれる状態となります。すなわち、使われない筋肉は筋力が低下し萎縮をきたし、ますます使えなくなってしまうということです。

 

数ヵ月その状態であると、関節が固くなる拘縮も見られ、進行するとほとんど動かせなくなります。拘縮のメカニズムは明らかではないようですが、結合組織の成分であるコラーゲンが増生し、筋肉が線維化するという報告があります※2

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本記事は幻冬舎ゴールドライフオンラインの連載の書籍『認知症のリアル 時をかけるおばあさんたち』(幻冬舎MC)より一部を抜粋したものです。最新の法令等には対応していない場合がございますので、あらかじめご了承ください。

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