――日本は借金大国であるという話をよく聞きますが、日本の貸借対照表ってどういう状態なんですか?
板山翔税理士:「令和2年度の日本の貸借対照表を見ると、資産720兆円に対して負債が1,375兆円あり、655兆円も負債の方が多い状態です。」
会社ならとっくに潰れている…大赤字の日本
日本の貸借対照表を実際に見たことってありますか?
実は財務省のウェブサイトで国の財務書類が公表されていて、誰でも見ることができます。財務省ウェブサイトはリンクフリーですので、リンクを記載しておきますね。
財務省『国の財務書類(令和2年度)』
(https://www.mof.go.jp/policy/budget/report/public_finance_fact_sheet/fy2020/kuninozaimurenketu2020.html)
国の財務書類(一般会計・特別会計)PDF1ページ目の貸借対照表の合計値だけを抜き出すと、次のとおりです。
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【日本の貸借対照表】
●資産合計 720兆円
●負債合計 1,375兆円
●純資産合計 -655兆円
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なんと655兆円の債務超過で、自己資本比率は-90%です。会社ならとっくに潰れていますよね。
損益計算書の方はといいますと、国は利益の獲得を目的としていないので損益計算書は作成されていないそうです。
ただ財源の合計(収入)と業務費用の合計(費用)を抜き出せば、損益計算書でいう当期純利益に近いフローの状況を知ることができます。
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【日本のフロー(財源・費用)の状況】
●財源合計 131兆円
●業務費用合計 190兆円
●差引 -59兆円
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ご覧のとおり業務費用を財源で賄いきれていない状況で、会社でいえば大赤字です。
今後も「増税&インフレ」がセットで続く可能性は高い
それでも日本が潰れないのは、会社と違って資金調達が容易だからです。キャッシュが不足すれば国債を発行して、買い取ってもらえばすむ話ですから。
ただし、これは日本の国債の信用が高いからこそできたことで、今後もずっと国債を買い続けてもらえる保証はありません。
信用がなくなった途端、国債を誰も買いたがらなくなって、財政破綻(またはそれに近い状態)に向かう可能性がないとは言い切れません。
そうなったとしても、お札を刷ればいいとか、日本銀行が国債を直接買えるように法改正すればいい(今の法律では禁止)とか、楽観視している人もいますが…。
むやみに円の流通量を増やせばインフレが激化してしまったり、円が信用を失って一気に円安が進んだり、結局ただではすまないでしょう。
まぁその辺の議論は経済学者の方々にお任せするとして、私からお伝えしたいことは、日本円に絶対の信頼を寄せるのはリスクがあるということと、少なくとも今後、増税とインフレがセットで続く可能性が高いということの2点です。
借金を返すためには、税収を増やさないといけないので、増税されるというのはわかりやすいと思います。
そうは言ってもいきなり税金を増やすわけにもいきませんので、そこで政府が狙うのがインフレです。
インフレにより物価が上がれば、販売価格が上がって給料も上がり、景気が良くなって、うまくいけば増税しなくても税収が増えるかもしれません。
思惑通りに景気が良くならなくても、インフレが起これば1円の価値が下がるため貯金の価値が下がるだけでなく、同時に借金の価値も下がるという隠れたメリットもあります。
債務超過が大きい日本の貸借対照表を見る限り、インフレによって資産の価値が下がるデメリットより、借金の価値が下がるメリットの方が大きいですよね。
世界の税金の歴史を見ても、戦争による戦費の調達などで借金が膨らんでしまった国には、ほぼ例外なく増税とインフレが起こっています。
日本に1905年に相続税が導入されたのも、日露戦争の戦費を賄うためだったそうです。
このように、日本の財政状態は厳しく、日本経済の未来が明るいとは言えませんが、文句を言ったって何も始まらないので、この状態をどうやって切り抜けるか? 少しでも前向きに考えていきましょう。
板山 翔
板山翔税理士事務所 代表、税理士
おそらく日本初の「オンライン専門の税理士事務所」の創設者。自社の事業を「税理士業」ではなく、「経営に必要な情報をオンラインで提供する事業」と捉え、経営戦略コンサルタントとしても活動している。従業員5名以下の小さな会社の経営者を中心に、「小さな会社だからこそできる差別化戦略」の立て方や、「短期間で売上アップするためのマーケティング戦略」、「長期的に資産を形成していくための財務戦略」などを教えている。
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