マーケットの見方…マクロストラテジストの場合
マーケットの方向性やトレンドを知るときには、メディアが取捨選択しているニュースに受け身にならず、「ご自身で幅広い資産の、やや長めのデータをクロスチェックされる」ことがよいでしょう。情報の断片では頭のなかは整理されません。
たとえば、「WSJ market data」と検索すると、主要な株価、米国債の各年限、主要な通貨、主要な商品などの値動きが、1年や3年単位で簡単に見られます。スマートフォンからは使い勝手がよくないですが、パソコンではとても見やすく、使いやすくなっています。
筆者の場合、「株価と長期金利を見比べる」「長期金利と短期金利を見比べる」「株価と原油を見比べる」「金利とゴールドを見比べる」……といったかたちで、どう連動しているか(「支配的な流れはなにか」)、その連動が崩れてきていないかを確認します。
「あるイベントがあったので、こうしたマーケットになっている」と天下り的に受け入れがちですが、逆に「こうしたマーケットになっている。それはなぜだろうか」と自分で考え直すことも重要です。
この「支配的な流れ」というのは「マーケットの短期的なテーマ(相関関係のようなもの)」を指していますが、ちなみに、ダリオは相関関係の不安定さを強調します。このことが、オールウェザー・ポートフォリオ(全天候型ポートフォリオ)の決定的な差別化要因になってきます。
金融市場は「ゴルディロックスな景気後退」を織り込む
7月分の雇用統計は、非農業部門雇用者数が前月から52万8,000人の大幅増加となりました。
強い雇用指標の一方で、①金融市場の「緩やかな景気後退の織り込み」にはほとんど変化がなく、②インフレの懸念は後退したままで、ほとんど感じられません。
言い換えれば、①厳しい景気後退の織り込みもなければ、②利上げの継続や引き締めの継続(=政策金利の高水準での維持)もありません。
たとえば、株価は緩やかな下落トレンドであり、長期金利は低下しています。
債券市場では、2年金利は高止まりする一方で、3年金利以降が低下傾向にあり、利下げはまもなくとの織り込みです。
同じことは、フェデラルファンド金利先物でも確認できます。
商品市場では、原油や銅などが下落し、ウクライナ危機以前の水準です。
長期のインフレ期待も鈍化したままです。
まとめれば、景気後退とはいえ「とても平穏な世界」、いわば「ゴルディロックスな景気後退」が織り込まれています。金融市場はサプライズによって形作られていますし、やや心配になる状況です。