(画像はイメージです/ココナラ法律相談)

夫婦の一方が単身赴任をしている場合の離婚率は、同居している夫婦よりも高くなる傾向があります。単身赴任中の寂しさや開放感から、つい浮気や不倫に手を出してしまうケースは少なくありません。そこで実際にココナラ法律相談のオンライン無料法律相談サービス「法律Q&A」によせられた質問をもとに、池本直記弁護士に単身赴任中の離婚問題について解説していただきました。

単身赴任の場合の財産分与の基準時

財産分与を行うにあたって、基準時をどのように考えるかは非常に重要な問題です。基準時よりもあとに取得したものであれば、離婚前に取得した財産であっても、財産分与の対象にはならないので、基準時をいつに設定するかによって、財産分与によって動く金額に大きな差が生じる場合があります。

 

財産分与の基準時は、実務上は、別居時点とされています。これは、財産分与は夫婦が婚姻中に協力して取得した財産について清算を行うものであるところ、通常は別居時に経済的な協力関係が終了すると考えられるからです。

 

それでは単身赴任からそのまま離婚に至るケースでは、いつの時点を財産分与の基準時とするべきでしょうか。単身赴任当初は、別居はするものの、当初は夫婦の経済的な協力関係が失われていないので、単身赴任からそのまま離婚協議に至るケースでは、別居時を財産分与の基準時と考えることは適切ではありません。

 

実務上は、個別具体的な事実関係を分析し、実質的に経済的協力関係が無くなったのはどの時点かを探求します。たとえば、ある時点を境に家計を別管理にするなどがあれば、同時点が財産分与の基準時となります。そのような変化がない場合には、当事者が離婚を申し出た日や配偶者が最後に自宅を出た日などを検討し、夫婦の経済的協力関係が無くなった時点を認定することになります。

給与明細等を開示してくれない場合の対応

婚姻費用・養育費の請求を適切に行うためには、相手方の収入に関する資料の入手が重要となります。相手方が資料の開示に協力的ではない場合は、どのように対処するべきでしょうか。

 

まず、同居中であれば、役所は同居の配偶者に対して課税証明の交付を認めていますから、役所において課税証明を取得することにより収入を把握することができます。また、自宅においてある通帳等から収入を推測させるような情報を入手することも考えられます。別居の場合は、相手方が任意に資料を開示しないのであれば、調停申立の上、相手方の勤務先に対する調査嘱託の申立を行う等、裁判所を通じた証拠収集が考えられます。

 

しかしながら、相手方の勤務先が裁判所への開示すら拒否する場合や自営業者であり資料の入手が困難である場合等は、最終的には相手方の生活状況や預貯金の取引履歴等から、収入を推定するという方法をとらざるをえない場合もあります。そのようなケースでは、別居に至るまでの間に、いかに充実した資料を入手できているかによって、その後の立証の可能性が大幅に変わってきます。

離婚トラブルに巻き込まれてしまったら──

今回は質問内容に沿って、一般的な考え方を紹介させていただきました。もっとも、法律問題は、個別具体的な事実関係によって大きく結論が変わりうるものですから、実際に離婚トラブルに巻き込まれてしまった場合には、早めにお近くの弁護士へ相談することをおすすめいたします。

 

離婚案件を取り扱っていると、離婚分野は特に、証拠収集の巧拙や初動対応によって、大きく解決の内容が変わることがある分野であると感じています。
 

 

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