前回は、趣味の「コレクション」が死後に散逸するのを防ぐ方法を紹介しました。今回は、遺言書の下準備としての「エンディングノート」の書き方を見ていきます。

エンディングノートは「気軽に」作成

エンディングノートの効用の一つとして、先ほど「遺言書の下準備になる」ことを挙げました。この意味について、少し詳しく解説しておきましょう。一般的に、遺言書をいきなり書き綴ることはなかなか難しいかもしれません。

 

ですから、まずエンディングノートの中で考えや思いをめぐらせて、頭を整理して各項目を記載したうえ、その中から重要事項を抜き出すように遺言書をまとめてみてはいかがでしょうか。

 

『タイムマシン』というSF映画があります。主人公が「タイムマシン」と呼ばれる架空の機械で、過去に戻ったりあるいは未来に行ったりする冒険物語ですが、いわばそのように頭の中で過去の時間を行き来して、「自分はあの時こうだった」「子供たちはああだった」とあれこれ思い出しながら、心に浮かんでくることを手当たり次第にエンディングノートに書き綴っていくだけでも、遺言書を作成するきっかけになるでしょう。まずは、気軽な気持ちでトライすることをお勧めします。

 

エンディングノートは一般に市販されていますし、また相続関係のムック本などで付録の形で提供されていることもあります。さらに、今はインターネットで、葬儀会社などが宣伝の一環としてワードやPDFなどのファイルを無料で提供しているものもあります。

 

形式も、自由筆記式のものもあれば、小学校などで勉強した算数のドリルのように、設問に応じて空欄を埋めていけば自動的にできあがるような体裁のものもあります。それらの中から書きやすそうなものを選んでみるとよいでしょう。

専門業者に依頼すれば「自分史」を作ることも可能

今述べたことからもお分かりでしょうが、エンディングノートを自分で作ることはさほど難しくありません。しかし、それでも、「おっくうだ」「手が不自由なので文字を書くことができない」などという理由で、自分自身で作成することをためらう人がいるかもしれません。

 

そのような人は、「自分史」などの作成を請け負う業者を利用するという手もあるでしょう。「自分史」とは、自分の歴史、すなわち生涯なり半生なりを文章化してまとめたものです。単にノートにまとめるだけでなく、本の体裁にして親戚や知人などに配る人もいます。

 

この自分史の作成をサポートする業者もいます。業者は依頼人がインタビュー形式で語っていく話を文字に起こして巧みにまとめていきます。エンディングノートも、このような業者に依頼すれば、簡単に作成できるでしょう。

 

業者の出自や強みは多様で、印刷会社がいわば副業的に手がけているケース、専門に展開している編集プロダクションなど様々です。問い合わせ、依頼する際には、完成品である本の見た目を重視するのか、それとも中身を充実させたいのかなどに応じて、自分のこだわりにかなう業者を検討するとよいでしょう。

 

例えば、インターネットで「自分史」「インタビュー」などの用語で検索すれば、すぐに業者は見つかるはずです。その中から料金なども比較検討して、最も適切と思われる業者を選択すればよいでしょう。

本連載は、2014年3月20日刊行の書籍『相続争いは遺言書で防ぎなさい』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

相続争いは遺言書で防ぎなさい

相続争いは遺言書で防ぎなさい

大坪 正典

幻冬舎メディアコンサルティング

相続をきっかけに家族がバラバラになり、互いに憎しみ合い、ののしり合う──。 故人が遺言書を用意していない、あるいはその内容が不十分であったために、相続に関するトラブルが起こってしまうケースは数多く存在していま…

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