前回は、遺言書の付言事項に「激しい恨みつらみ」を記した事例を紹介しました。今回は、遺言書の付言事項で「ラストメッセージ」を伝えた事例を見ていきます。

死後、伝えたいメッセージを付言事項に残す

最後に、筆者が今までで一番、感動した付言事項の例をご紹介しましょう。

 

遺言者である男性は、年齢がふた回りほど離れていた女性と籍を入れないまま暮らしていました(恐らく、前妻と子供への配慮からでしょう)。

 

死を意識し始めた頃に、「今自分の生活を支え面倒を見てくれている彼女にマンションを渡したいので生前贈与をしたい」と贈与税などに関するサポートを依頼されました。その際に、死後、彼女に伝えたいことがあるということで、いわば付言事項の形でメッセージを作成したのです。

「君に会えたことが僕の人生で一番素敵なことだった」

そこには、次のような一節が記されていました。

 

「この年で本当だったらこんなことは言えないんだろうけれどね、でもやっぱり君には伝えておきたいことがある。最後に君に会えたことが僕の人生で一番素敵なことだった。僕は君に恋をしているのだ。本当に素晴らしい時間を共有できた。心から、ありがとう」と。

 

これを読めばお分かりのように、完全に女性へのラブレターになっているのです。彼女が男性の死後、あいさつに来られた時に読ませてもらったのですが、「ああ、いい文章だな」と心底感動しました。女性も本当に嬉しそうでした。

 

この男性のように書くのは照れくさいかもしれませんが、奥様など愛する女性に対しては、これくらいのことを書いてもよろしいのではないでしょうか。

 

何度も繰り返しますが、付言事項は自分の思いを伝えられる最後のメッセージになるのですから。

本連載は、2014年3月20日刊行の書籍『相続争いは遺言書で防ぎなさい』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

相続争いは遺言書で防ぎなさい

相続争いは遺言書で防ぎなさい

大坪 正典

幻冬舎メディアコンサルティング

相続をきっかけに家族がバラバラになり、互いに憎しみ合い、ののしり合う──。 故人が遺言書を用意していない、あるいはその内容が不十分であったために、相続に関するトラブルが起こってしまうケースは数多く存在していま…

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