近年、建設需要の増加により、業界は好景気の明るい見通しです。しかし、これが中小規模の建設会社にとって追い風になるかは疑問です。大手と中小間で利益格差が生じ、逆風に転じる可能性を十分に秘めているからです。原価管理システムの開発・提供をしている三國浩明氏が、生き残りをかけて、さまざまな見直し・改革が必要な建設会社に必須の「原価管理術」を解説します。

CCUS導入で懸念される中小から大手への人材流出

建設業界の人材不足について、国も手をこまねいているわけではありません。その一例が、建設業に関わる人材の資格や社会保険の加入状況、就業履歴などを管理するため「建設キャリアアップシステム(CCUS)」の利用を国土交通省が推進している点です。

 

同省は2023年度から「あらゆる工事でCCUSを完全実施すること」を目指していることからも、大手建設会社だけに関係する話ではないことが分かります。

 

CCUSの具体的な運用のポイントは次のとおりです。


1 技能者の情報を登録したICカード(CCUSカード)を交付する
2 技能者が現場に入る際、CCUSカードの読み取りが必要になる
3 技能者ごとの就業実績や講習の受講歴などが記録される
4 技能者のレベルによってCCUSカードが4段階に色分けされる
5  所属する技能者のレベルや人数等に応じて施工業者の能力が4段階で評価され、評価団体・国土交通省のHPで公表される

 

CCUSを利用する主なメリットは、技能者のキャリアが可視化される点にあり、元請け事業者に対して「うちにはこれだけの資格者がいる」ということをアピールしやすくなります。一方、建設業で働く人は自身の技能や経験を示しやすくなり、処遇改善が期待できます。

 

また、これまで建設業にとって足かせとなっていた作業員名簿の作成や、建設業退職金共済(建退共)の手続きなどもCCUSにより効率化されます。

 

その一方で、システム利用にあたっては課題も少なくありません。まずはコストがかかる点です。

 

資本金に応じてかかる登録料のほか、管理者ID利用料、現場利用料を支払う必要があります。これらの費用は一回支払えば終わりではなく、登録料は5年おき、管理者ID利用料は毎年、そして現場利用料は現場で作業員が就業する都度料金が発生するのです。

 

したがってCCUSを利用するときはシステムなどの環境を整え、うまく業務効率化につなげられればいいのですが、それができなければ単に負担が増える形になってしまいます。

 

中小建設会社にとってCCUSはコスト以外の懸念点があります。作業員のスキルや経験が可視化されることは“強い”建設会社にとってはいいことです。抱えている作業員のスキルをアピールし、新規案件の受注や新たな人材獲得などにつなげることができます。

 

しかしアピールできるほどの人材がそろわない“弱い”中小建設会社はますます人材を集めにくくなる可能性があります。CCUSの本格運用に備えるためにも、今のうちから優秀な人材確保に動かなくてはいけません。そのためには、やはり会社の利益を増やし社員にとって魅力的な会社になることが大切です。

利益を生み出す建設業のための原価管理術

利益を生み出す建設業のための原価管理術

三國 浩明

幻冬舎メディアコンサルティング

大手電器メーカーのコンピューター販売部門に30年間務めるなかで、建設会社への原価管理システム供給の必要性と将来性を感じ、起業。業界導入実績ナンバーワンを記録した、原価管理システムを提供している著者が、長いキャリア…

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