近年、建設需要の増加により、業界は好景気の明るい見通しです。しかし、これが中小規模の建設会社にとって追い風になるかは疑問です。大手と中小間で利益格差が生じ、逆風に転じる可能性を十分に秘めているからです。原価管理システムの開発・提供をしている三國浩明氏が、生き残りをかけて、さまざまな見直し・改革が必要な建設会社に必須の「原価管理術」を解説します。

「どんぶり勘定」経営が多い中小建設業

帝国データバンクの調査によると建設業の年間倒産件数は2008年の3,446件から
毎年減ってはきているものの、それでも2021年の建設業者の倒産件数は1,066件に
のぼり、これまでどれだけ多くの建設業が倒産してきたかが分かります。

 

人件費の確保、人材不足、新型コロナウイルスの影響、インボイス制度の導入……今後、
中小建設会社に課題は山積みですが、こうした課題に取り組むには、十分な利益を確保し
企業として、ゆとりのある企業体質をつくらねばなりません。そのためにも利益管理にしっかりと目を向けるべきです。

 

請求漏れや支払い漏れ、支払いのミスに気づかず、原価管理も浸透していない、すなわち「どんぶり勘定」で経営を続けている建設会社は珍しくありません。

 

通常では考えられない建設会社にありがちな「どんぶり勘定」の原因として、工事の着
手から完成までの期間が長く、さまざまな取引業社との発注依頼の取決めが、工事現場で
行われることもあり、全工程の工事代金の把握が難しいことが挙げられます。

 

第二次世界大戦後に復興を目的とした大規模なインフラ整備によって、建設業は大きな
需要に恵まれていました。その後も建設業は景気の良いときは民間需要に、景気の悪いと
きにも景気対策としての公共事業に支えられてきました。

 

それ自体は良いことですが、好景気ゆえに仕事さえ受注すれば儲かる体制ができあがり、厳密に収支を管理せずとも利益を確保できる時代が大手をはじめ建設業界全体に長く続いてきたのです。

 

実際、私が原価管理システムの導入を支援していた建設会社のなかに、およそ2,000
万円もの請求漏れが発覚したところがありました。

 

道路舗装会社でしたが、システム導入にあたり工事の取引会社の取引状況情報などを整理したところ、小規模な工事が何件も完了していたのに請求していなかった事実が分かったのです。

 

その会社の人は「この2,000万円だけでシステムを入れたかいがあった」と笑っていましたが、あのまま請求漏れが放置されていたら笑い事では済みません。自社の数字を理解し、利益を必ず確保するという意識を高める必要があります。

 

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利益を生み出す建設業のための原価管理術

利益を生み出す建設業のための原価管理術

三國 浩明

幻冬舎メディアコンサルティング

大手電器メーカーのコンピューター販売部門に30年間務めるなかで、建設会社への原価管理システム供給の必要性と将来性を感じ、起業。業界導入実績ナンバーワンを記録した、原価管理システムを提供している著者が、長いキャリア…

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