29歳以下の就労者の割合は、1990年以降下降線
もちろん会社の利益管理以外にも建設会社の前に立ちはだかる問題を無視することはできません。少子高齢化の今、日本では多くの業界が人手不足という同じ状況にありますが建設会社は特に深刻です。このことは多くの建設会社の方が共感できる点だと思います。
特に若者離れは顕著で、主な理由としては3Kとよく称される、きつい・汚い・危険というイメージが強くなっている点です。またそのイメージから派生して雇用条件が悪い、職
場での上下関係が厳しく、年の近い先輩がいないといった人間関係への不安やキャリアアップを描けないといったことが挙げられます。
建設業界に関わる身としてはこうしたネガティブなイメージをもたれることにとても残
念な気持ちになりますが、事実として建設業の離職率は非常に高くなっています。せっか
く夢をもって建設業に足を踏み入れてくれた若者が、次々と辞めてしまっているのです。
図表1は、厚生労働省が取りまとめた産業別の離職状況を整理したものです。これを見て
も分かるように、建設業は全産業の平均よりも離職率が高くなっています。製造業と比べ
ると1年目ではおよそ2倍の開きがあることが分かります。
なお、厚生労働省がとりまとめた「建設業における雇用管理現状把握実態調査 令和2
年度調査」によると、建設現場で働く若手が求めることのトップ3は次のとおりでした。
1 週休2日制の推進
2 仕事が年間を通じてあること
3 能力や資格を反映した賃金
いずれも若者が求めるのはもっともだと思いますが、建設会社にとっては実現させるのが難しい事情も理解できます。週休2日制を実施しながら仕事を回し、きちんと賃金を支払う。さらに賃金に応じた社会保険料も負担する。これらを行うには十分な利益が必要です。
とはいえ利益を得ようとして土日返上で工事を入れたり、賃金を抑えたりするようであ
れば、結局は人材が離れてしまいます。そうして人手不足に陥ると、たとえ工事を受注しても利益を生み出せなくなります。
1990年以降、建設業就労者のうち29歳以下の割合は下がり続け、いまや全体の1割程度です。そして3割を超える就労者が55歳以上となっており、これからの建設業において働き手が減っていくことは間違いありません。
今後も建設業を続けていくためには熟練者が建設業界に残っている今のうちに若手を増やし、技能を承継することが急務です。
人手不足を解決するには待遇を改善することが有効ですが、そのためにはお金が必要です。給料を上げるにも休日を増やすにもそれだけのコスト(労務費)を見込まなければな
りません。
このコストをまかなうには業務の合理化をする以外にありません。具体的には各建設会社がシステム化で無駄な業務をなくし、マンパワーに頼らない手段で利益を増やしていくべきです。
逆にいえば、そのような工夫をしさえすれば、利益を増やしきちんと人材を確保できる可能性が高まるということです。そして人手不足を解消することで利益アップにもつながり、好循環が生まれます。