(※画像はイメージです/PIXTA)

近年、建設需要の増加により、建築業界は明るい見通しです。しかし、これが中小規模の建設会社にとって追い風になるかは疑問と言わざるを得ません。大手と中小間で利益格差が生じ、逆風に転じる可能性を十分に秘めています。生き残りをかけて、さまざまな見直し・改革が必要な建設会社に必須の「原価管理術」を、業界導入実績ナンバーを記録した「原価管理システムツール」の開発・提供をする三國浩明氏が、徹底的に解説します。

社員全員が利益に執着できる会社に生まれ変わるには

改めてですが原価管理の目的は「利益をあげるため」です。

 

利益は会社を存続させ成長させるために欠かせません。利益を確保することこそが企業の本来の姿であり、その利益によって人材育成や研究開発など新たなチャレンジが可能となります。

 

社長が決める年間利益目標は単なる数字ではありません。それは会社の成長や社長自身と社員の生活にも直結します。

 

その意味で年間利益目標は社長の夢なのです。社長の夢が社員に伝われば、会社の成長はさらに加速します。

 

社長がただ「頑張れ」と言っても具体的な目標がなければ社員は動けませんが、会社としての年間利益目標を立て、原価管理で進捗管理をすれば社員のモチベーションは向上し、行動も変わってくるはずです。

 

このような変化を社内に起こすために複雑なノウハウなどは必要ありません。

 

“年間利益目標+原価管理”を行えば、これまでは決算終了まで分からなかった売上や利益が見え、それだけで社長をはじめ社内の意識が見違えるように変わります。

 

「このままこの会社に勤めていて大丈夫だろうか」「建設業界の先行きが不安」と考えていた人も、原価管理で会社全体の利益の見込みが見えるようになれば不安の解消にもつながるはずです。

 

原価管理により会社の年間利益目標と工事ごとの利益目標、そして実績を可視化する。そんなシンプルなことだけで、利益に執着できる会社に変わることができます。

 

これが、ゆとりのある建設会社へ近づくための大きな一歩となるのです。

経営者が押さえるべき「3つの数字」

原価管理ではさまざな数字を用いますが、会社の夢、つまり具体的な年間の利益獲得のために最終的に押さえるべき数字は、次の3つに絞られます。

 

1、全社年間利益計画

2、完成済工事利益

3、期中予想利益

 

全社単位での年間利益を計画し、完成済みの工事利益を踏まえて期中の利益を予想するという流れです。

 

この3つのプロセスをしっかり理解することが大切です。

 

1つ目の「全社年間利益計画」は、その名のとおり会社が1会計年度で得ようとする利益を意味します。原価管理において最も大切なのが全社年間利益計画を期首に立てることだと私は考えています。

 

そのうえで工事ごとの実行予算(原価計画)や原価集計を行い工事ごとの利益を把握していきます。

 

会社の利益には「営業利益」「経常利益」「純利益」と複数あります。

 

これについてはどれを選んでも構いません。シンプルに売上と仕入の比較でいいなら営業利益、固定費も含めて管理をしたいなら経常利益、最終的に会社に残る利益(税引き後利益)に注目したければ純利益といった形です。

 

いずれにせよひとつ基準となる利益のタイプを定めて年間利益計画を立てます。この全社年間利益計画が社員一丸となってゴールを目指す指標となります。

 

目指すゴールが決まれば、あとは月単位で「完成済工事利益」を集計し、期中予想利益を導き出します。そのうえで3ヵ月単位で期中予想利益と利益計画との差異を確認します。

 

3月決算の会社の場合は、前年6月・9月・12月の時点で利益計画との差を予想するといった形です。

 

また、個別の工事に振り分けしにくい車両費や修繕費、リース代、現場監督の人件費などの原価は「共通現場」という仮想の工事を作り、ここにまとめて集計します。これにより毎月の収益がつかめるようになります。

 

このような集計を行った結果、年間利益計画に対して期中予想利益が不足する場合はその原因を分析し、対策を行い、なんとしてでも達成できるように手を打っていきます。

 

そのためには、幹部を月1回程度集め「利益検討会」を行うことが有効です。

 

その場で、それぞれの担当工事の完成済み工事利益と今後の予想利益を発表してもらい、全社の年間利益計画との差異を埋めるための対策を考えるのです(図表1参照)。

 

[図表1]見込利益一覧表

 

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利益を生み出す建設業のための原価管理術

利益を生み出す建設業のための原価管理術

三國 浩明

幻冬舎メディアコンサルティング

大手電器メーカーのコンピューター販売部門に30年間務めるなかで、建設会社への原価管理システム供給の必要性と将来性を感じ、起業。業界導入実績ナンバーワンを記録した、原価管理システムを提供している著者が、長いキャリア…

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