(※画像はイメージです/PIXTA)

近年、建設需要の増加により、業界は好景気の明るい見通しです。しかし、これが中小規模の建設会社にとって追い風になるかは疑問です。大手と中小間で利益格差が生じ、逆風に転じる可能性を十分に秘めているからです。原価管理システムの開発・提供をしている三國浩明氏が、生き残りをかけて、さまざまな見直し・改革が必要な建設会社に必須の「原価管理術」を解説します。

「インボイス制度」スタートで消費税の負担増?

「インボイス制度」の導入はまさにこれから対処すべき問題だといえます。

 

今後予定されている法改正の中でも、2023年10月1日からスタートする「インボイス制度」は、会社が負担する消費税が増える可能性があるので対策が必要です。

 

納税は会社経営の悩みの種であり、高額な納税は当然ながら会社の資金繰りに影響が及びます。私も会社を経営していますので税金のルール改正の動向には常に注意しています。

 

本書では「インボイス制度」の細かいルールに踏み込むことはしませんが、建設会社に及ぶポイントを絞って整理しておきます。

 

「インボイス制度」の基本的なルールは、仕入税額控除の要件として各事業者が「適格請求書(インボイス)」を発行することを求めるものです。

 

この適格請求書には次の情報を記載しなくてはなりません。

 

1、適格請求書発行業者の登録番号

2、適用税率(8%か10%か)

3、消費税額等

 

この3つの情報のうち、登録番号を取得するためにはあらかじめ税務署長に申請を行う必要があります。

 

申請後「適格請求書発行事業者」として登録されると企業独自の登録番号が発行されます。あとは請求書を発行する際に3つの情報を記載すれば適格請求書として認められますが、適格請求書発行事業者になると次の4項目の義務が課されます。

 

1、適格請求書の交付 取引の相手方の求めに応じて、適格請求書(インボイス)を交付   する。

2、適格返還請求書の交付 返品や値引きなど、売上の返還を行う場合に、適格返還請求書を交付する。

3、修正した適格請求書の交付 交付した適格請求書に誤りがあった場合に、修正した適格請求書を交付する。

4、写しの保存 交付した適格請求書の写しを保存する。

 

手順を見ると面倒に感じますが、このような手続きをきちんとしなければならないのは、これが請求先の消費税額に影響するからです。

 

例えばX社が次の2社から工事代金の請求を受けた場合、消費税の取り扱いが異なります。

 

A社:工事代金110万円(内消費税10万円)を請求(適格請求書)

 

B社:工事代金220万円(内消費税20万円)を請求(適格請求書ではない)

 

「インボイス制度」が始まる前であれば、X社は消費税の税額を計算するときにA社とB社に払った消費税計30万円を差し引くことができます。このように支払った消費税を差し引くことを仕入税額控除といいます。

 

ところが「インボイス制度」が本格運用となると、適格請求書ではないB社に支払った消費税20万円は差し引くことができません。

 

仕入税額控除が認められるのは「適格請求書を使った取引」に限られるからです。

 

取引先が適格請求書を発行してくれないと仕入税額控除ができず、そのような事業者に発注をした場合、発注した建設会社の消費税負担が重たくなってしまいます。

 

特に下請けへの発注が多い建設会社の場合、会社の資金繰りにネガティブな影響を及ぼすことも十分に考えられるのです。

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利益を生み出す建設業のための原価管理術

利益を生み出す建設業のための原価管理術

三國 浩明

幻冬舎メディアコンサルティング

大手電器メーカーのコンピューター販売部門に30年間務めるなかで、建設会社への原価管理システム供給の必要性と将来性を感じ、起業。業界導入実績ナンバーワンを記録した、原価管理システムを提供している著者が、長いキャリア…

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