外国籍となった相続人が「相続放棄」するには、どんな手続きが必要か?【司法書士が解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

ある男性が亡くなりました。遺産はごくわずかであるため、相続人は相続放棄を検討しますが、相続人のなかに日本国籍を離脱し、外国籍となった人がいます。この場合、相続放棄の手続きはどうしたらいいのでしょうか。多数の相続問題の解決の実績を持つ司法書士の近藤崇氏が解説します。

日本国籍を離脱した相続人…相続放棄の手続きは必要?

 【相談内容】 

 

横浜に住む父親の弟にあたる叔父が亡くなり、相続が発生しました。

 

父親はきょうだいが多く、すでに亡くなっている人もいます。そのため、甥姪を合わせると相続人は10人以上います。

 

相続の手続きは、わずかばかりの銀行預金と、叔父の自宅の不動産のみです。

 

不動産の登記については、司法書士に依頼をしています。

 

また全体として相続財産の額がわずかなので、相続人のほとんどは相続放棄を検討しています。

 

ただ、甥姪のうちの1人がアメリカ人と結婚し、長年アメリカで生活しています。また、アメリカ国籍を取得後、日本国籍は離脱しています。

 

この相続人の場合、そもそも相続放棄の手続きが必要なのでしょうか? また相続放棄をすることは可能なのでしょうか?

相続放棄の手続きは、相続人の国籍に関係なく必要

 【回 答】 

 

相続が発生したとき、相続人は相続を承認するか(単純承認)、または相続を放棄するかを選択しなければなりません。

 

相続を放棄すれば、被相続人の権利や義務を一切受け継がないため、借金を相続することもありません。この手続きを「相続放棄」といいます。これは遺された相続財産よりも借金などの負債が大きい場合に認められる、相続人の権利です。

 

そして、「単純承認」あるいは「相続放棄」の検討は、相続人であれば全員に必要です。

 

現在の国籍は関係ありません。

 

このため、最初の質問に対しての回答としては、「相続放棄が必要」という回答になります。

 

相続放棄をするのか、相続を承認して遺産分割協議書などに参加するかについては、相続の開始を知ってから3ヵ月以内に行わなければなりません(※1)。

 

※1 民法第915条

相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。

 

◆「元・日本国籍」の相続人が相続放棄する場合、必要となる書類

また、元々は日本国籍だった方が、外国籍の方と婚姻したことで外国籍を取得していることがあります。

 

こうした「元・日本国籍」で、現在は外国籍の相続人の方が相続放棄をする場合、どのような書類が必要になるのでしょうか。

 

元日本国籍を保有していた相続人が、その後に何らかの理由によって、ほかの国籍を取得(帰化)している場合、日本人ではなくなっているため、日本に戸籍がありません。

 

そのため、相続放棄手続きにおいて必要となる、自身の現在の戸籍を取得することは不可能です。日本では原則として二重国籍の保有を認めていないことが理由です。

 

こうした方の相続放棄手続きの場合、通常の相続放棄手続きにおいて必要となる戸籍や住民票等のほかに、「日本国籍を喪失したことがわかる戸籍(日本国籍を喪失した旨が書かれている戸籍)」が必要になります。

 

一例ですが、日本国籍を離脱した記載のある「改正原戸籍」などがこれに当たります。

 

この戸籍において、他国の国籍を取得したことが明らかな場合は、諸外国籍を取得したことがわかる証明書までは求められないことが多いです。筆者が取扱った横浜の家庭裁判所におけるケースではそうでした。

 

なお、通常通りの相続放棄に関する戸籍などは必要ですので、下記のリンクなどでご確認ください。

 

家庭裁判所 相続放棄の必要書類

 

相続放棄が認められれば、最初から相続人ではなかったことになりますので(※2)、日本に戸籍や住所がなく、印鑑証明書などの取得ができなくても、相続手続きを進めることが可能でしょう。

 

※2 民法第939条

相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす。

 

ただ、申し立てる管轄の裁判所裁判官の判断や、日本の戸籍において諸外国の戸籍を取得したことが明らかにならない場合、不明点が多い場合などは、別途書類を用意する必要が生じる可能性もあります。詳しくは直接、申立先となる管轄裁判所や、渉外相続の手続きに詳しい司法書士などの各専門家に委任すべきでしょう。

 

 

近藤 崇
司法書士法人近藤事務所 代表司法書士

 

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    司法書士法人近藤事務所 代表司法書士

    司法書士法人近藤事務所ウェブサイト:http://www.yokohama-isan.com/
    孤独死110番:http://www.yokohama-isan.com/kodokushi

    横浜市出身。横浜国立大学経営学部卒業。平成26年横浜市で司法書士事務所開設。平成30年に司法書士法人近藤事務所に法人化。

    取扱い業務は相続全般、ベンチャー企業の商業登記法務など。相続分野では「孤独死」や「独居死」などで、空き家となってしまう不動産の取扱いが年々増加している事から「孤独死110番」を開設し、相談にあたっている。

    著者紹介

    連載現場第一主義の司法書士がレクチャーする「相続まめ知識」

    本記事は、司法書士法人 近藤事務所が運営するサイトに掲載された相談事例を転載・再編集したものです。

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