前回は、CFOの条件について取り上げました。今回は、企業の成長手段の一つである、M&AにおけるCFOの役割について見ていきます。

新たなシナジー効果も得られるM&A

M&Aは、買収によって自分の会社の弱みをカバーし、かつ一気に会社規模を大きくする手法である。かつてはグローバルスケールの大企業以外の企業にはほとんど無縁だった手段だが、今や会社を成長させようと思うなら中小企業でも十分に検討に値するものとなった。

 

日本経済が成熟化し、内需が飽和している中で、M&Aを成長の手段として捉えることは、不可欠になってきている。とはいえ、やはり簡単に手を出していいものでもない。

 

10年ほど前には、本業とは無関係の事業を手がける会社を資金力にモノを言わせて片端から買い漁る、無節操なM&Aが横行した時代もあったが、現在主流を占めるのは、自分の会社の強みや弱みをしっかりと分析し、シナジー効果が得られるような本来の意味でのM&Aだ。また、会社ごとの売買のみならず、事業部単位での売買も盛んになった。

 

現在、あらゆる分野で技術革新が進んでいる。流行の変遷も稀有のスピードで進行し、どんなヒット商品もその寿命は昔に比べればずいぶんと短い。ビジネスの分野でも、時代の変化とともに陳腐化した事業、あるいは市場の飽和でこれ以上の成長が見込めない事業というものがある。だが、ある会社にとっては自社の事業との関連が薄れて意味がなくなった事業でも、別の会社にとっては新たなシナジー効果が得られるということもある。

M&A後の舵取りもCFOの重要な役割のひとつ

だが、実際に会社や事業を売り買いするのには、かなりの労力を要する。欲しい会社や事業の売り手を見つけたり、売りたい会社や事業の買い手を見つける際には、M&A情報を専門に集めている仲介者や、FA(フィナンシャルアドバイザー)に依頼するのもひとつの選択肢である。常識的な価格算定方法や、常識的な条件の基準、確認すべきポイントなどに詳しく、信頼できる専門家が必要となるのである。

 

また、M&A後(ポストマージャー)にも注意を払わなければならない。売り買い自体はうまくいっても、会社がひとつになってから、事業がうまく回らずに失敗したM&Aはいくらでもある。「その後」の舵取りを行なうのも、CFOの仕事なのである。

本連載は、2010年3月1日刊行の書籍『CFO経営』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

CFO経営

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佐藤 英志,須原 伸太郎

幻冬舎メディアコンサルティング

上場企業を取り巻く環境は、この30~40年の間に激変しました。カリスマ社長の「勘」だけでモノが売れたのは、昔の話。経営が複雑化した時代に企業に求められるのは、財務の専門家の視点を持った経営です。本書では、なぜCFOが…

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