前回は、めまぐるしく変わる「会計・税務・会社法」への対応について説明しました。今回は、財務のプロであるCFOが「IR」をチェックする際の留意点について見ていきます。

聞き役に徹し、株主に対して誠実に対応

IRについては、どの企業もCFOの仕事である、という認識は一般的になっているようだ。しかし、マスコミを呼んで華々しいイベントを行なうことが、IRだと勘違いしている企業があるので注意したい。IRは、PRや広告と同様、派手なものだと思われがちであるが、それは本来の目的と異なる。

 

プロとしてIRをチェックする際のポイントは、2つある。

 

ひとつ目は、「聞き役に徹する」ということ。株主からの質問のすべてにきめ細やかに対応し、企業として誠実な答えを返し続ける。シンプルなようだが、これが意外と難しい。たとえば下方修正の決算時などに、問い合わせが殺到し、IR担当の問い合わせ電話がつながらないといった事態が起こる。これでは株主に対して誠実に対応しているとは言えない。こうした実務が滞りなく行なわれているか、監督するのもCFOの役目なのである。

「IR」の成功は人間関係がすべて!?

2つ目は、「目的を持ってIRする」こと。よく「M&Aをしたいのに、うちの会社にはお声がかからない」などと嘆いている経営者の声を耳にするが、これはIRがうまく機能していないことが原因でもある。

 

自社の戦略を立てるだけでなく、市場に対してメッセージを出し続ければ、おのずとM&A案件はやってくる。明確な目的もなく、記者を呼んで賑々しいイベントを行なっても、あまり意味はない。

 

最後に、IRは(IRも、と言えるが)人間関係がすべてであることを忘れてはいけない。CFOは、主要新聞社の記者と懇親を深めることが不可欠だ。一度、マスコミに悪いイメージをもたれてしまうと、その後の記事がネガティブな書かれ方になりやすい。もちろん、自社の情報をフラットな立場でみてもらうことは大切だが、必要以上に記者の反感を買わないようにしたい。

本連載は、2010年3月1日刊行の書籍『CFO経営』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

CFO経営

CFO経営

佐藤 英志,須原 伸太郎

幻冬舎メディアコンサルティング

上場企業を取り巻く環境は、この30~40年の間に激変しました。カリスマ社長の「勘」だけでモノが売れたのは、昔の話。経営が複雑化した時代に企業に求められるのは、財務の専門家の視点を持った経営です。本書では、なぜCFOが…

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