冷静な分析、トップへの進言ができるか?
他人のことは客観視できても、自分のことは客観視できないのが人間の性である。多くの社長は、自分が経営している会社の現状を正確に把握したり、分析したり、将来を予測できないものだ。そんなときに、数字をもとにした冷静かつ客観的な業績予測をし、経営者に対策を考えさせることができるのがCFOだ。
社長といえども人間である。売上予測には楽観的になるし、数字を冷静に分析すれば早晩銀行が厳しい姿勢をみせることが明らかであっても、実際に銀行員の口から厳しい言葉を聞くまで予想すらしないものである。
経営者が「突然銀行から融資を打ち切られた」と思っているケースは、第三者にはその1年も2年も前から予測できたものであることが多い。しがらみからも偏見からも自由な立場から、過去の業績に基づいて客観的に会社の分析を試みて将来を予測する。ただ数字に強いだけでなく、冷静に分析して、なおかつそれをトップに進言できることが、CFOの条件だ。
長期的な視点に立った意見でトップを動かす
もちろんいくらCFOといえども、最初から社長が進言を聞き入れてくれるわけではない。後付け講釈では信じてもらえないばかりか遠ざけられてしまう。信用は長期的な姿勢で得るものだ。
たとえば、まずは予測を立ててトップに報告する。そのときは聞き流されるかもしれないが、1カ月後、3カ月後、1年後にその予測が現実のものになれば、次からはCFOの言うことを聞いてくれるようになるだろう。CFOにとっては予測だが、社長にとっては「予言」となるのである。
どこの組織にも、自分の勤務先企業の現状把握や分析、将来予測を的確にできている社員や役員はいるものだ。だが、そのような社員や役員が、社長に向かって意見をし、実際にしかるべき対応をとらせることができるかというと、現実にはかなり難しい。
部下の進言には耳を傾けている、自分の会社は何でもモノが言えるようにしている、あるいは風通しがいいとトップが思っていても、部下のほうはそうは思っていないというケースもよく耳にする。あるいは、会社の経営が思わしくないときに、社長が信じるべき相手を間違えてさらに窮地に陥るというのもよく聞く話だ。
人は、耳当たりの良いことを言ってくれる人を信じ、苦言を呈する人を遠ざけてしまう傾向がある。社長であっても例外ではない。だからこそ、トップと同格で苦言を呈することのできるCFOの役割がさらに重要になる。
CFOは、単に進言すればそれでよいというわけではない。一時的に会社の業績が悪くなるとしても、長期的な視点に立って自分の最善と信ずることを述べ、トップを説得して、しかるべき対応をとらせる必要があるのだ。
【図表】CFOの先読み