証券市場を取り巻く環境は相次ぐ不況により激変
2007年夏のサブプライムショック、そして2008年9月のリーマンショックを経て、証券市場におけるプレイヤーたちを取り巻く市場環境は激変した。
日本の証券市場における変化としては、まずアクティビストファンドの活動がおとなしくなってしまったことが挙げられる。それまで、たとえばスティール・パートナーズは30社近い上場企業の株を取得し、会社側に増配や役員派遣などの要求を突きつけ、会社側との対立を繰り返してきた。
だが、サブプライムショックの影響がじわじわ効きだした1年半ほど前から、保有株の処分を大々的に進めている。2009年3月末時点で、新コスモス電機、石原薬品、ユシロ化学工業、江崎グリコ、中央倉庫は全株手放し、ブルドックソースやブラザー工業、日清食品、ハウス食品などについても今や保有株数はごくわずかである。
アクティビストファンドの活動沈静化を受け、2年前の株主総会で買収防衛策を導入した会社で、期限切れを迎えて延長を見送るケースが増えている。リーマンショックによって、資金の出し手が疲弊した影響で、上場企業が市場から複雑なスキームで資金を調達するケースも激減した。経営陣がTOBで流通する株を買い取り、非公開化するMBOも、資金を提供してきた投資銀行の疲弊で沈静化した。
経営の舵取りが難しい時こそCFO視点の経営改革が必要
2009年6月に入って、ようやく日経平均が1万円を回復した。株式市場にわずかでも明るさが戻ったとはいえ、企業業績の回復はまだ希望的観測の範囲内だ。株価の回復が見込めない状況下では、最もシンプルで、しかも償還期限がある社債にしか投資家の資金はつかないため、普通社債の発行が急増している。
ほんの1年半〜2年ほど前までは、うるさいほど売り込みに来ていた投資銀行マンも、今やほとんどその姿をみることはない。その意味では、横文字言葉を連発して、複雑な金融商品を売り込みに来る証券マンと社長の間に立つ、「通訳としての」CFOの役割は、やや後退したと言えるかもしれない。だが投資先を探し求め、無節操にさまよっていた資金が消えてなくなった現在こそ、自社の持続的な成長を見据えての財務戦略やM&Aに取り組むべきである。
不況下では、なおさら勝ち組・負け組がはっきりする。勝ち組が負け組を飲み込んでいくM&Aや、生き残りをかけた勝ち組同士の提携・統合は、今後も着実に増えていくだろう。最近では、パナソニックと三洋電機の例や、実を結ばなかったがキリンとサントリーの例がある。このような状況では、経営の舵取りは、ますます難しくなっていると私は考えている。だからこそ、CFO視点からの経営改革が求められているのだ。