見直しが進むアメリカ型の「株主至上主義」
会社は誰のものか? モノ言う株主全盛の数年前までは、この問いに対する答えは、「もちろん株主のもの」であった。アメリカ型株主至上主義のブームがひと段落ついた後には、この反動も起こった。すなわち、「会社は他の誰のものでもない。従業員のものである」といった情緒的な主張である。
2009年7月に企業の新任役員に対して行なわれたアンケート(図表)によれば、「株主より従業員を重視する」との答えが1年前よりも増えていることがわかった。「会社は社会の公器」との見方に共感する人が8割にのぼるなど、株主至上主義への見直しが進んでいることが裏づけられた。
【図表】新任役員らが重視するステークホルダー
会社は「会社にかかわるすべての人」のもの
そもそも会社は「モノ」ではないし、誰か一定の人々が所有できるわけではない。会社は常に生き物であり、さまざまなヒト、モノ、カネが入り組んで成立している。つまり、会社は会社にかかわるすべての人のモノであり、あえて言うなら、その会社のことを真剣に考えているすべてのステークホルダーのものだと言えるだろう。
たとえ株主であっても、短期的な株価の上下に便乗して富を手に入れようとするデイトレーダーは、その会社のことを「真剣に考えている」とは言えない。たとえ従業員であっても、その会社で働くことに誇りを持たず、単なるフリーライダーであれば、会社のことを「真剣に考えている」とは言えない。
たとえ債権者であっても、その会社の成長のために黒子となって働く気がなく、会社と共に事業を育てようと考えていないような場合には、「真剣に考えている」とは言えない。
これらの例の反対を考えてみれば、おのずと「会社は誰のものか」という難しい問題に、答えが出るのではないだろうか。社長とCFOらが協力して行なっていくCFO経営においては、この視点を忘れてはいけない。