営業キャッシュフローに類似した概念
ここで、M&Aの現場で使われる専門用語について解説しておこう。企業価値の評価方法としてしばしば使われるのが、「EBITDAマルチプル」だ。これは、その企業の価値が「EBITDAの何倍か」ということを示す指標である。
EBITDAとは、「Earnings Before Interest,Taxes,Depreciation and Amortization」のイニシャルを取ったもので、以下のいずれかの算式によって求められる。日本語に訳すと、「利息、税金、減価償却費控除前の利益」ということになり、営業キャッシュフローに類似した概念だ。
EBITDA=当期純利益+税金+支払利息+減価償却費
EBITDA=経常利益+支払利息+減価償却費
EBITDA=営業利益+減価償却費
また、企業価値(EV:Enterprise Value)、株式価値、負債価値は、以下のように定義される。
●EV=EBITDA×EBITDAマルチプル=株式価値(株式時価総額)+負債価値(有利子負債-現預金)
●株式価値(株式時価総額)=EV-負債価値(有利子負債-現預金)
CFOが活躍するM&Aの現場では、売り手も、買い手も、その企業の価値を、たとえば、「EBITDAの3~3.5倍」といったように、ある程度レンジを持たせつつ、お互いに価格目線を示すやり取りをすることが多い。
また、M&A対象企業の社名を開示しない情報交換の場(ノンネーム)での打診をする段階でも、お互いの価格目線を確認するために、「こんな業種の企業で、このくらいの利益規模感で、マルチプル3倍ぐらいでの売却を考えているのですが」といったやり取りが行なわれる。
より正確な計算を期すためにDCF法と併用
もうひとつ、企業価値の評価方法としてよく使われるものに、「DCF法(Discounted CashFlow Method)」がある。
EBITDAマルチプルは、日本独特のP/L構造上の問題で、特別利益、特別損失が反映されずに計算されているので、正しいキャッシュフローを計算できない可能性がある。そのため、DCF法による企業価値算出を、併用して行なうことが望ましい。