前回は、CFO人材を外部から招へいする際の留意点について説明しました。今回は、自社の事業全般に精通するCFOを育成する方法について見ていきます。

経営者の資質がある人材に専門知識を身につけさせる

CFOを内部で育てることも選択肢のひとつである。CFOは会社の事業全般に精通しているだけでなく、法律、税務、ファイナンスなどの専門知識を必要とし、何よりも経営者としての資質が欠かせない。

 

事業全般の知識は人事ローテーションを繰り返せば学ぶことが可能だし、専門知識は座学で身につく。ここまでは基本的に努力が及ぶ部分だが、経営者の資質だけは、持って生まれたものに大きく左右され、努力ではどうにもならない。どれほど専門知識があっても、経営者としての資質を持ち合わせていなければ、CFOとしては機能しないのである。

 

したがって、内部で育成しようとするのならば、経営者としての資質がある人材に専門知識を身につけさせるという手順が合理的と言わざるを得ない。建前はともかく、ほとんどの会社は、新人の採用段階から将来の幹部候補生となるべき人材かどうかの見極めはしているはずであり、幹部候補生には幹部候補生としての育成メニューを用意しているはずである。

育成メニューには「財務」や「法務」も組み込む

CFOを内部育成するのであれば、この幹部候補生の育成メニューに、CFOに必要な専門知識を習得させる機会を組み込むことをお奨めする。

 

幹部候補生のローテーション先には、現場の営業や経営企画室、社長室、人事、広報などの部門は大抵組み込まれているが、財務部門が組み込まれていないケースは少なくない。多くの会社で、財務分野だけは、財務のみの視点にかたよった集団になってしまうことが多いのは、他の部署に比べて専門知識の修得に時間がかかり、いったん知識を修得した人材を他部署へ放出すると、目の前の実務が回らなくなるからだ。

 

財務ほどではないが、法務もいったん配属になると、とかくローテーションからはずれてしまいがちな部署である。こういった財務、法務も幹部候補生のローテーションの対象に組み込み、現場の抵抗をなだめすかしてでも財務、法務に幹部候補生を滞留させないようにする必要がある。

 

さらに、会社内のあらゆる部署のOJTをもってしても不足する専門知識は、やはり本人が座学で補わなければならない。

 

大企業の場合は国内外の大学や大学院への留学制度があるが、留学制度を設けていない会社で、CFO候補者が不足する専門知識を身につけさせようとするのならば、何らかの形で本人をバックアップする体制を考えるべきだろう。

 

ただ、その一方で、やや逆説的になるが、CFOは専門知識を有するスタッフを使いこなせる程度の専門知識があれば十分だと言ってもいい。自分が何を知らないのかが自覚できていれば、その専門知識を補完してもらうスタッフの選び方も間違うことはないのである。

本連載は、2010年3月1日刊行の書籍『CFO経営』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

CFO経営

CFO経営

佐藤 英志,須原 伸太郎

幻冬舎メディアコンサルティング

上場企業を取り巻く環境は、この30~40年の間に激変しました。カリスマ社長の「勘」だけでモノが売れたのは、昔の話。経営が複雑化した時代に企業に求められるのは、財務の専門家の視点を持った経営です。本書では、なぜCFOが…

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