(画像はイメージです/PIXTA)

ある資産家男性は、妻に先立たれたものの、長男夫婦と長女夫婦、そして2人の孫に囲まれ幸せに過ごしていました。ところが、長男夫婦が事故で他界。ひとり残された孫を不憫に思った男性は、この子を養子縁組して育てて嫁がせたのち、亡くなります。しかし、男性の相続を巡って養子となった孫と長女でバトル勃発し…。高島総合法律事務所の代表弁護士、高島秀行氏が実例をもとに解説します。

一般的な「養子縁組をする事情」を考えてみよう

本件のように、孫を養子にするということは、少なくありません。今回は、両親が先に亡くなったので扶養をするためという理由ですが、一般的には、①子どもが娘なので男である孫に財産を継がせたい、あるいは、②相続税の節税のため、ということが多いです。

 

まず、①のケースは、男女平等といわれてはいるものの、女性は結婚して家を出てしまい、姓を継いでもらえないから、結婚した娘が男の子を産んだ場合、孫である男の子を養子にして姓も継いでもらい、財産も継いでもらいたいということなのです。

 

また、②のケースは、相続税法上、養子縁組をした場合、既に実子がいても、養子1人までは基礎控除の対象とするとされていますので、孫と養子縁組をすることによって、1人分(600万円)の相続税の基礎控除が増えて、その分相続税の節税となるということです。

 

これらの理由から、孫を祖父母の養子とするということは少なくないのです。

 

もちろん、本件のように、祖父母が孫を扶養するために養子縁組をするということもあると思います。

 

さて、孫と養子縁組をした場合、もともと、祖父母と孫という関係がある上に、養親子関係という親子関係ができることから、二重の身分関係ができることとなり、法律関係が複雑となります。

 

そこで、このような二重の身分関係がある場合に、二重に相続分も認められるかという問題が生じることとなります。

 

このような場合は、2つの身分に基づき二重の相続資格が認められることから、二重に相続分も認められると考えられています。

 

よって、星子ちゃんは、太郎さんの代襲相続人の地位と、養子として相続人の地位と両方持つこととなることから、星子ちゃんの相続分は3分の2となるという選択肢②が正解で、相続人は、花子さんと星子ちゃんの2人だから相続分は、花子さんも星子ちゃんも、2分の1ずつとなるとする選択肢①は誤りとなります。

 

相続資格の重複は、配偶者の一方が配偶者の父母と養子縁組をしたケースで配偶者が亡くなったときに、配偶者として相続人となりますし、きょうだいとしても相続人となるというときにも生じますので、注意が必要となります。

 

※プライバシーに配慮し、実際の相談内容と変えている部分があります。

 

 

高島 秀行
高島総合法律事務所
代表弁護士

 

 

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