(写真はイメージです/PIXTA)

社員による横領をはじめ、企業不祥事が発生した場合、当該企業は不祥事を起こした社員の責任をいかに追及するか判断を迫られることになります。今回は、業務上横領事件が発生した場合の具体的な手続きと「刑事告訴」において注意すべきポイントについて、企業法務に詳しいAuthense法律事務所の西尾公伸弁護士が解説します。

自社のみで「刑事告訴」対応が難しいワケ

業務上横領の刑事告訴を会社のみで対応することはおすすめできません。

 

刑事告訴対応に精通している弁護士に早期に相談することをおすすめします。それには3つの理由があります。

 

1.迅速に証拠を集める必要がある

刑事告訴をするためには、申告する事実を裏付けるに足る証拠が必要となります。必要な証拠がないと、そもそも、告訴状を受理してもらうことができません。

 

そして、証拠の収集は迅速に行う必要があります。証拠が隠滅されてしまうおそれがありますし、関係者に事情聴取を行う場合には、時間の経過とともに人の記憶があいまいになり、正確な情報が聞き取れなくなってしまう可能性もあるためです。

 

しかし、会社の方が本来の業務に加えて刑事告訴に対応することは、相当な負担になります。必要な証拠を見極め、その証拠がどこにあるか、どのような手続きで収集すべきかなどを検討し、獲得しなければならないのです。

 

そのうえ、その証拠の収集の仕方を誤れば、後々、その証拠の価値を棄損してしまうこともあります。

 

本人を含む関係者から聴取をする際も、「なにを」「どのような順序で」「どのような質問により」聴取するのか、高度な技術が必要となります。

 

2.告訴状を警察署に受理してもらうハードルが高い

告訴状には記載すべき内容があり、ポイントを押さえて作成する必要があります。

 

ポイントを外すと受理してもらえませんし、そもそも、業務上横領のように複雑な事案においては、弁護士に相談するよう警察が勧めてくる場合もあるようです。

 

告訴状は、作成したものを警察署に持参すればそのまま受理されるのでなく、告訴状の内容を説明に行ったその日に受理されないことのほうが多いです。告訴状の内容を把握した警察官が、受理のために必要な証拠を指摘してきたり、必要に応じて検察官に相談したうえで受理の可否を回答してきたり、受理前に警察が必要な捜査を先行させたり、といろいろなパターンがあります。

 

そこで、警察からの指摘を受けて証拠関係の説明をしたり、警察が証拠の収集を指示してきたことに対して意見したり、速やかに受理されるべき事案であることを主張したりと、個別の事案によりさまざまな対応を要します。

 

3.被害金の回収、懲戒処分、再発防止策の策定など、やるべき業務が多い

会社で業務上横領事件発生が発覚した場合、すべきことは刑事告訴だけではありません。

 

その不祥事により、会社がそれ以上の悪影響を被らないようとるべき措置があります。たとえば、被害金の回収、当該社員に対する適切な懲戒処分、再発防止策の策定などです。

 

これらについても、刑事告訴の手続きをあわせ、迅速に対応していく必要がありますが、本来の業務に従事しながら不祥事対応をすることは、ご担当のかたにとって大きな負担となります。

 

また、その対応を誤れば「不祥事対応が悪かった」と評価されてしまうリスクもあるため、迅速かつ適切な対応が求められるのです。

 

以上の理由から、業務上横領への対応を弁護士に依頼することにはさまざまなメリットがあるといえるでしょう。

 

 

西尾 公伸

Authense法律事務所

弁護士
 

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本記事はAuthense企業法務のブログ・コラムを転載したものです。

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