定期的な説明や「広報NEWS」の配信を活用
広報担当者にとっては、仕事に集中できる職場環境が整っているのが理想です。しかし、一部の企業ではこうした無理解がはびこっているケースもあるでしょう。こうした場合に広報担当者はどう対応したら良いのでしょうか?
まずは、広報担当者の方々が成果を出したり、経費節減に努めたりした上で、社内広報を通じて自らを理解してもらうようにするのが前提です。成果を出していないようでは評価されないのは仕方がないということになります。しかし、努力して成果を出している場合は、数字を使ってしっかり社員の前で説明すれば、わかってくれる人たちは必ず増えていきます。
私がおすすめするのは、定期的に社員たちの前で、広報活動の成果を報告する機会を作ることです。朝礼でも、社内会議でも良いでしょう。実際に、私自身も報道数の増加や広告換算の金額を多くの社員が集まる会議で発表した際には、多くの反響がありました。一部の方々からは「広告換算で広報の成果を示すのをはじめて見ました」「とてもわかりやすく、広報活動がいかに大事かを理解できました」などといった声をいただきました。
もちろん、社員全員に理解してもらうことは容易ではありません。社内広報を頑張っても、過度な期待は禁物です。しかし、理解する人たちが少しずつ増え、それが多数派になれば、もともとはメディアや広報活動への理解度が低い会社でも職場環境が改善されていくでしょう。社内広報の努力を続ければ、まず広報活動を理解する人が増え、次には広報に頼る人が出てきます。
私自身も営業担当や採用担当から「広報活動の成果を活用したい」「こうしたネタがあるので記事掲載をお願いできないか」との協力要請が増えてくるにつれ、やりがいが出てきたのを覚えています。広報担当者にとって、経営者や他の部署の従業員から頼りにされることは何よりうれしいことなのです。
メディアに掲載された際に、その都度、社内メールで掲載記事の情報を流すのも一つの手段です。広報活動の成果を頻繁に示すことができることに加えて、有名メディアに自社の記事が掲載されているにもかかわらず、社員が気づいていないという状況も防ぎやすくなります。
私の場合は「広報NEWS」と名づけて、ほぼ毎日、掲載記事の情報を全社員に配信するようにしました。すると、それを読んだ社員たちから「取引先から記事を読んだという連絡がきました」「家族から記事を見たと喜ばれました」などの連絡がくるようになりました。
このほかにも、「定期的に広報物を活用するための勉強会を社内で開催する」、「積極的に他部署の人たちと交流する」、「自社のホームページやSNSで掲載記事を紹介する」などのやり方があると思います。どのやり方でなければいけないというきまりはありませんし、複数の方法を併用して社内理解を深めていくやり方もあります。自分に合った方法で社内広報に努め、理解を深めていけば、職場環境は少しずつ改善されていくでしょう。
社内広報や社内の広報活動への理解の深め方については、私自身が最も悩み、試行錯誤してきました。これまでも親しいBtoBや中小企業の広報担当者の方々から「広報活動への社内理解が低く、困っている。どうしたら良いか」という相談をいただいたことが多くありました。これまで私が提案させていただいたように、広報活動の成果を具体的に数字でアピールしたとしても、会社によっては「自慢をしている」など、一部の無理解な声に苦しむ人もいらっしゃいます。
こうした残念な職場環境で働いていらっしゃる場合、この章の冒頭エピソードに登場した広報担当者のように、広報活動に無理解な会社から、理解のある会社を探して転職する手もあります。しかし、まずはその前に自分で努力して社内の人たちに理解してもらおうという姿勢や創意工夫をすることが、自社のためにもなり、その人の次の職場や新しい人生での成功にもつながるのではないかと思います。社内広報の結果、理解が深まれば、そのまま働くのも良いですし、仮にそうでなければ転職するのも良いでしょう。
いずれにしても、「社内広報」という簡単そうに見えて本当は非常に難しい仕事を粘り強くできる方であれば、広報活動に理解のある会社に転職された時に、きっと大きく飛躍できることでしょう。
日高広太郎
広報コンサルティング会社 代表