(※写真はイメージです/PIXTA)

商品やサービスを一般消費者に向けて提供する「B to C(Business to Consumer)」企業と異なり、法人に向けて事業を行う「B to B(Business to Business)」企業は、マスコミへの営業が有利ではありません。日本経済新聞の記者から「B to B」企業広報に転身した日高広太郎氏の著書『BtoB広報 最強の攻略術』(すばる舎)で効果的な戦略を解説します。

残念すぎる行動  ①不適切な評価

ここからは、広報担当者のやる気を失わせてしまう会社の行動を改めてまとめていきます。これから挙げるような会社の対応は、「会社の顔」であるべき広報担当者をがっかりさせ、会社のイメージにも悪影響を与えます。そればかりか、優秀な広報担当者が辞めてしまうリスクにもつながります。何一つ良いことはありません。

 

こう私がお話ししても、「広報担当者が辞めても、ほかの人を新しく採用するから大丈夫だ」と思われる方がいらっしゃるかもしれません。

 

しかし、その考えこそが広報という仕事を甘く見ている証拠です。優秀な広報の代わりになる人を見つけるのは、ほかの部署の優秀な人を見つけるよりも難しいと思ったほうが良いでしょう。メディアに携わっている人材は、他の産業に比べて非常に少なく、メディアと広報の両方を経験している人はほとんどいません。つまり、メディアや広報の専門知識や能力を持っている人は、営業や経理など他の部署と比べて非常に少ないのが現状なのです。

 

さらに、冒頭エピソードのように優秀な広報担当者が辞めてしまうような会社は、メディアから「広報軽視の会社だ」と見られてしまいます。今はSNSなどを通じた転職市場の情報交換が非常に盛んです。「広報軽視」「広報に対して冷淡」などという情報は筒抜けです。広報に理解がないと言われている会社が採用活動をしても、優秀な広報担当者が新しく入社してくれるでしょうか? 最悪の事態を招かないためにも、これから説明する「残念すぎる行動」を取らないようにしたいものです。

 

残念すぎる行動の一つ目は、広報活動への「不適切な評価」です。参考までに、記事が掲載された際の不適切な評価を列挙していきます。

 

Ⓐ「掲載された記事が小さすぎる」←紙面には限りがあります。

 

Ⓑ「自分が取材でアピールしたことがすべて掲載されていない」←紙面として面白くない話は削られます。

 

Ⓒ「こんな小さなメディアに掲載されても意味がない」←メディアにはそれぞれに特有の影響力があります。前向きな記事が掲載されただけでもプラスだと考えましょう。

 

Ⓓ「取材を受けたのに、記事が掲載されなかった」←気持ちはよくわかりますが、やはり紙面には限りがあります。ネタとしてつまらない場合や紙面需給によっては掲載されません。

 

Ⓔ「記事を掲載してもらうくらい、広報部ではない自分でもできる」←あなたにはできません。

 

これら五つの不適切な評価は、いずれもメディアの知識がない上に、理解しようとしていない姿勢からきています。知識不足は仕方がありません。しかし、理解しようという姿勢は必要です。知識がないのであれば、適切な評価のために、なぜそうなのかを広報担当者に詳しく聞くことです。理解しようとする意欲や姿勢がないと、会社の広報戦略の失敗リスクが極めて高くなります。

 

「自分はほかの部署で成果を残しているのだから、記事を掲載してもらうくらい自分でも簡単にできる」などと勘違いしているⒺに当たる人は特に要注意です。こうした自信過剰の人は、単に前向きな記事を掲載してもらえないばかりか、記者にうまく話を引き出されて、会社の秘匿情報を漏らしたり、誤解を含んだ表現を実名で書かれてしまったりするリスクがあるからです。

 

仮に「広報など簡単にできる」などと根拠なく思った人がいれば、その時点でその人の広報活動の失敗が決まったようなものです。広報活動を成功させようと思うのであれば、あくまで謙虚かつ誠実にメディアや仕事に向き合い、努力する必要があります。

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BtoB広報 最強の攻略術

BtoB広報 最強の攻略術

日高 広太郎

すばる舎

日本経済新聞社のエース記者として活躍し、東証一部上場の「BtoB企業」の広報担当役員に転身、年間のメディア掲載数を就任前の80倍以上に増やした広報のプロフェッショナルである著者。現在は独立し、広報コンサルティング会社…

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