(※写真はイメージです/PIXTA)

商品やサービスを一般消費者に向けて提供する「B to C(Business to Consumer)」企業と異なり、法人に向けて事業を行う「B to B(Business to Business)」企業は、マスコミへの営業が有利ではありません。日本経済新聞の記者から「B to B」企業広報に転身した日高広太郎氏の著書『BtoB広報 最強の攻略術』(すばる舎)で効果的な戦略を解説します。

不適切な評価が生んだ「残念すぎるエピソード」

以下でお話しするのは、私が後輩記者から聞いた「残念なエピソード」です。もちろん実話です。私の後輩記者の友人で、新聞社でもある程度活躍していた女性記者が会社を辞めて、ある上場企業の広報課長になったそうです。彼女は当初、張り切って自社の掲載記事を増やそうと努力したそうです。

 

そのかいあって1年後には、年間で約50件もの記事が掲載されました。もともとは年10件以下の掲載しかなかったそうなので、たった1年で数倍に増やしたことになります。広報担当の読者の方々であれば、それがいかに大変なことかが理解できると思います。

 

彼女は当然、社内で評価されると思っていたのですが、残念ながら結果は違いました。経営陣は時間がたつにつれて高水準のメディア掲載数に慣れてしまい、「うちの会社は上場企業なんだから、このくらい記事が掲載されて当然だ。我々の営業が販売を頑張ったためであって、広報担当者の努力のおかげではない」という態度を取ったそうです。

 

この会社側の仕打ちに失望した彼女は、わざと仕事の手を抜き、メディア掲載数を増やさないようにしたそうです。彼女は私の後輩記者に「この会社では必死に広報活動をしても評価されないから、仕事をするだけ損よ」と話していたということです。

 

私は記者と広報担当の両方をやってきただけに、彼女の気持ちが良くわかります。かつての惨憺たるメディア掲載の状況を忘れ、高水準のメディア掲載を当然のように思ってしまう人が意外にたくさん存在するのもわかるような気がします。記事がたくさん掲載されて自分が恩恵を受けていても、広報に感謝をするどころか、前述のような不適切な評価をするケースもあるでしょう。こうした事象はフィクションではなく、広報の現場で、現実に起こっていることなのです。

 

仮に経営陣から適切な評価を得られていれば、私の後輩記者の知人は、さらに頑張って成果を出し、企業イメージを高め、営業との相乗効果が出ていたでしょう。しかし、現実はそうではありませんでした。彼女は会社の理不尽さを嘆き、やる気を失ってしまいました。

 

会社の顔となるべき広報の彼女が記者に愚痴をこぼしているのですから、企業イメージもガタ落ちです。ほかの部署と同様に、広報活動についても「成果を上げれば、適切に高い評価をする」という当たり前のことを実行することが、いかに大事かを感じさせるエピソードだと思います。

残念すぎる行動② 広報の話を聞かない、理解する気のない態度

次に紹介する会社の残念すぎる行動は、広報の話を聞く気のない態度を取ることです。広報担当者が社内広報をするのは、単なる自己アピールではありません。メディアに掲載された記事を社内でも周知し、営業や人材の採用に役立て、会社の生産性を向上させるためです。

 

しかし、こうした広報担当者の説明を真面目に聞かない人も一定数存在します。自分の偏った考えにとらわれ、他人の話を聞こうとしないと、いつまでたっても理解が深まらず、間違った認識で広報活動を評価したり、発言したりしてしまいます。こうした人は、一般社員にも経営幹部にも存在します。

次ページメディア界の仕組みも知らずに「小さなメディアを軽視」

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    日高 広太郎

    すばる舎

    日本経済新聞社のエース記者として活躍し、東証一部上場の「BtoB企業」の広報担当役員に転身、年間のメディア掲載数を就任前の80倍以上に増やした広報のプロフェッショナルである著者。現在は独立し、広報コンサルティング会社…

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