(※写真はイメージです/PIXTA)

商品やサービスを一般消費者に向けて提供する「B to C(Business to Consumer)」企業と異なり、法人に向けて事業を行う「B to B(Business to Business)」企業は、マスコミへの営業が有利ではありません。日本経済新聞の記者から「B to B」企業広報に転身した日高広太郎氏の著書『BtoB広報 最強の攻略術』(すばる舎)で効果的な戦略を解説します。

私が現場で記者をしていたころは、日経新聞では国内の記者の署名記事はめったにありませんでした。ところが、最近は署名記事や筆者名、どこの支局の記者や支局長が記事を執筆したのかが明記されることが多くなっています。こうした企画記事は支局が持ち回りでやっていることもありますので、広報担当者としては、新聞社の支局や担当記者にメールや電話で連絡を取り、記事ネタや掲載してもらいたいというお願いをしてみてはいかがかと思います。

 

もちろん、見ず知らずの企業広報から連絡があっても、記者から返信があるとは限らないでしょう。特にこれまで日経新聞に掲載されたことが少ない企業であれば、記者から関心を持ってもらうのは簡単ではないかもしれません。その場合は、もともと知り合いの記者に担当記者を紹介してもらうことも一つの手でしょう。

 

日経新聞は企業担当の記者がほかの全国紙より圧倒的に多く、大企業から中小企業まで幅広く担当記者をつけているのが特徴の一つです。これにより、企業ニュースの分厚い報道が可能になっているのです。このため、大半の企業や業界には担当記者がいます。地方企業であれば、日経新聞の支局の担当記者がいますし、広報担当者は新聞社の支局長に挨拶したことがあるかもしれません。こうした信頼の置ける記者や支局長を通じて、自社の記事を掲載してもらいたい紙面の担当記者に連絡を取ることも可能なはずです。

 

もちろん、紹介してもらうには、広報担当者が担当記者から信頼を得ていることが前提となります。記者も人間ですから、信頼できない人や面識のない人をほかの記者に紹介することはありません。仮にトラブルになってしまった時に、自分がほかの記者から責められるリスクがあるためです。

メディア別のネタづくり(地方紙、地方情報誌編)

BtoBや中小企業には、地方に本社のある企業も多くあると思います。東京に本社がある企業でも、地方に支社や支店がある会社は多いでしょう。自社の顧客や取引先が地方の企業や消費者だということは珍しくありません。こうした場合に、自社のニュースをぜひ掲載してもらいたいのが地方紙です。

 

地方紙は業界紙や専門紙と同様、全国紙に比べれば発行部数は少ないですが、その地方での影響力は予想以上に大きいのが特徴です。全国紙の影響力を過信し、地方紙の影響力を軽視する人がいますが、それは誤解ですし、間違っています。広報活動は自社の目的に合ったメディアに記事を掲載してもらうことが最も大事なことです。地方での自社の知名度向上を目指すのであれば、全国紙だけでなく、地方紙にも視野を広げ、そこでの記事掲載を重視していく必要があるでしょう。

 

地方に住んでいる読者にとっては、もちろん国際ニュースや日本全体のニュースも大事ですが、自分が住んでいる地域や地方自治体の情報がたくさん掲載されていることが重要です。地方紙は自治体に支局や情報網を張り巡らしているため、全国紙ではとても網羅し切れない、細かい地域の情報を掲載できるのです。

 

それこそ地方紙には、地域の中学校のイラスト展や少年野球のボランティアなどのニュースが細かく載ることもあります。このため、地方在住の方々の中には、全国紙よりも地方紙を読むという人もたくさんいます。つまり、実際に、全国紙よりも地方紙のほうが影響力が強いとされる地域は多くあります。このため、企業の広報担当者が特定の地域や自治体の人たちに自社のことを知ってもらいたいと考える場合、地方紙に記事を掲載してもらうことが有効なのです。

 

地方紙の場合は、何と言っても地方ネタを用意するのが大事です。自社にとっては大きなニュースでも、地方紙が対象としている自治体との関係が薄ければ、記事掲載されづらいのが実情だからです。

 

例えば、自社がはじめてある県に進出する、といったニュースはうってつけの記事ネタでしょう。「A社が地方のオフィスを移転、増床する、人員を増強する」「製造業のB社が地方の工場を拡張する」「C社が〇〇市の研究施設に巨額投資する」といったネタも取り上げてもらいやすいと思います。「地元の企業が新しい商品を開発、販売する」などのネタも掲載されます。

 

こうしたニュースは地元の経済や雇用、消費者に大きな影響を与えるためです。地元密着のネタは全国紙では掲載されなくても、地方紙では取り上げてくれることがありますし、大きな記事になることもあります。

 

さらに、地方には独自の情報誌がある場合もあります。例えば福岡県であれば「ふくおか経済」、香川県であれば「かがわ経済レポート」などいろいろなメディアがあり、地域の人々の情報源になっています。

 

こうしたメディアは東京では無名かもしれませんが、地元では予想以上に影響力があるケースがあります。地方での企業の知名度向上を目指す企業の広報担当者は、地方紙に加えて、こうした地元の情報誌に自社の記事を掲載してもらうことも検討してはいかがでしょうか。記事ネタづくりのコツは、原則として地方紙と同じです。地元に関連するものであれば掲載されやすいでしょう。

 

このほか、地方での企業の知名度向上を目指す上で、記事掲載を目指したい有力メディアの一つが「ブロック紙」です。ブロック紙とは、販売地域が複数の都府県にまたがる地方紙のことです。中部地方や近畿地方の一部などが販売地域となる中日新聞や、中国地方の中国新聞、東北地方の河北新報などさまざまなブロック紙があります。ブロック紙は全国紙ほどではありませんが、一般の地方紙に比べて発行部数が多く、新聞としての知名度も高いと言えます。

 

こうした新聞では、販売地域の記事ネタが歓迎されます。ブロック紙以外の地方紙では一つの地方自治体が販売対象のことが多いですが、ブロック紙の場合は対象地域が広いため、記事ネタの対象地域も広がります。つまり、企業の広報担当者が記者に記事ネタを提供できるチャンスが多いわけです。

 

ただし、ブロック紙の場合は対象地域が広いにもかかわらず、一般の地方紙と紙面の量はそれほど変わりません。記事を掲載できる紙面の量に比べて記事の供給量が多いため、記事掲載のハードルは高いと言えるでしょう。

 

広報担当者は、「ブロック紙に記事を掲載してもらいたい」と思った場合には、全国紙と同様にしっかりパターン分析をしつつ、記事ネタを練り上げて記者に連絡を取るようにしましょう。「ブロック紙は全国紙ではないから、きっと簡単に掲載してくれるだろう」という甘い考えで広報活動をやっていると、記事がボツになったり、そもそも記者から相手にしてもらえなかったり、といった悲惨な末路が待っていると思います。

 

日高広太郎

広報コンサルティング会社 代表

 

BtoB広報 最強の攻略術

BtoB広報 最強の攻略術

日高 広太郎

すばる舎

日本経済新聞社のエース記者として活躍し、東証一部上場の「BtoB企業」の広報担当役員に転身、年間のメディア掲載数を就任前の80倍以上に増やした広報のプロフェッショナルである著者。現在は独立し、広報コンサルティング会社…

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録