世界経済の先行き不透明感から、中国・香港市場は小幅反落。 (画像はイメージです/PIXTA)

香港在住・国際金融ストラテジストの長谷川建一氏(Wells Global Asset Management Limited, CEO)が「香港・中国市場の今」を解説していきます。

ハンセン指数 20,562.94 pt (▲0.22%)

中国本土株指数 7,077.09 pt (▲0.42%)

レッドチップ指数3,708.82 pt (+0.42%)

売買代金893億7百万HK$(前日851億5万HK$)

欧米の流れを受け、アジア市場は軟調な展開

先週末に、発表された7月の米国総合PMIは47.5、ユーロ圏総合PMIは49.4といずれも事前予想を下回り、景気拡大の節目となる50を下回った。この流れを受けてアジア市場は世界経済の先行き不透明感が強まり、軟調な展開となった。

 

明日から開催される米FOMCでは75bpsの引き上げが織り込まれ、サプライズはないとの見方が強まっている。10年米国債利回りは2.8%前後で落ち着いた動きとなっている背景には、40年ぶりの高インフレを抑制するためのFRBによる急速な利上げが、米国経済をリセッションに陥らせることになるとの懐疑的な見方がある。

 

25日の香港市場は小幅に反落し前日比0.22%安で引けた。朝方は、下げ幅を拡大する場面も見られたが、午後は前日終値付近で一進一退の動きとなった。FOMCという重要イベントを前に、香港市場の売買代金は連日1,000億香港ドル割れの薄商いが続いており、様子見気分が強い。

 

目立ったところでは、6月に政府の消費推奨政策を受けて大幅に上昇した中国自動車関連が、本日は値を下げた。米銀大手エコノミストが、自動車販売について、2022年末まで需要は伸び悩む可能性が高いと示唆したことをきっかけに、慎重な見方が広がった。EVメーカーのNIO(9866)は6.4%安、自動車メーカーの小鵬汽車(9868)は6.2%安、理想汽車(2015)は5.9%安、吉利汽車(0175)は2.4%安となった。

 

中国デジタル銘柄にも売りが先行し、Eコマース大手のアリババ(9988)が2.4%安、美団(3690)は1.8%安、テンセント(0700)は1.7%安で引けた。ハンセンテック指数は1.38%安と市場をアンダーパフォームした。

 

一方で、本土不動産株は上昇、不動産株で構成されるハンセン本土不動産指数は大幅反発し、前日比3.18%高と逆行高となった。中国政府が国内不動産業者の資金繰りを支援するため、不動産ファンドを新設すると報じたことが好感された。資金規模は最大440億ドル(3,000億元)に上るとみられ、中国国務院が先週、設立計画の承認をしたと述べた。不動産開発の旭輝集団(0884)は10.2%高、龍湖集團(0960)は6.7%高、碧桂園(2007)は4.4%高、政府系デベロッパーの華潤置地(1109)は3.2%高となった。

 

中国本土市場では、中国経済の先行き不安がくすぶり、上海総合指数は前日比0.60%安の3,250.39と3日続落、CSI300指数は同0.60%安の4,212.64だった。新型コロナウイルスの感染数が高止まりする中、新規陽性者数(無症状者含む)は7日連続で600人を上回っており、行動抑制強化の影響が不安視されている。徐々に行動制限の解除が伝えられるマカオでは、すべての市民に検査を義務付けるなど、事態鎮静化は見えていない。

 

 

中国政府は不動産基金の設立を発表

中国政府は不動産基金を設立し、経営難に陥っている中国恒大集団など不動産デベロッパー十数社を支援する計画を発表した。同基金は中国建設銀行から500億元、中国人民銀行から300億元の再貸出枠を確保し、基金の規模は2000~3000億元(最大440億ドル)まで拡大することが可能と説明している。

 

中国では7月に入って住宅購入者からの住宅ローンを支払わないとの訴えが相次ぎ、経営難に陥っている不動産開発大手の一部サプライヤーも銀行融資の返済停止をちらつかせている。このため、不動産市場の先行きに対する悲観論が広がりつつあった。不動産業界最大手の一角だった中国恒大は、債務再編計画を7月末までに暫定提出する予定で、約3,000億ドルもの負債を抱える同社がどのような計画を打ち出すか注目を集めている。不動産株で構成されるハンセン本土不動産指数は先週21日に最安値を付けた。

 

今回の基金の設立は想定よりも早い中国政府の動きであるといえ、基金は未完成の住宅建設プロジェクトにつなぎ融資を実施し、完成を後押しするほか、不動産開発会社が発行した金融商品を購入できるようにし、資金の流動性を確保することも目的としている。また中国政府は、インフラ建設に向けた特別債発行についても検討するなど、資金供給を積極化する姿勢を示している。中国政府は、経済対策を次々と繰り出している。コミットメントは強く、経済重視の姿勢にぶれはないと思われる。ただ、綱渡りの部分もあり、市場は、この局面をどう乗り切るのか、見方が分かれている。

 

 

 

長谷川 建一

Wells Global Asset Management Limited, CEO/国際金融ストラテジスト<在香港>

 

 

 

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    Wells Global Asset Management Limited, CEO最高経営責任者 国際金融ストラテジスト <在香港>

    京都大学法学部卒・神戸大学経営学修士(MBA)

    シティバンク東京支店及びニューヨーク本店にて、資金証券部門の要職を歴任後、シティバンク日本のリテール部門やプライベートバンク部門で活躍。 2004年末に東京三菱銀行(現:MUFG 銀行)に移籍し、リテール部門のマーケティング責任者、2009年からはアジアでのウエルスマネージメント事業を率いて2010年には香港で同事業を立ち上げた。その後、独立して、2015年には香港金融管理局からRestricted Bank Licence(限定銀行ライセンス)を取得し、Nippon Wealth Limitedを創業、資産運用を専業とする銀行のトップとして経営を担った。
    2021年5月には再び独立し、Wells Global Asset Management Limitedを設立。香港証券先物委員会から証券業務・運用業務のライセンスを取得して、アジアの発展を見据えた富裕層向けサービスを提供している。(香港SFC CE No. BIS009)
    世界の投資機会や投資戦略、資産防衛にも精通。個人公式サイトなどを通じて、金融・投資啓蒙にも取り組んでいる。

    ● 個人公式サイト
     「HASEKENHK.com」(https://hasekenhk.com/)

    著者紹介

    連載国際金融ストラテジスト長谷川建一の「香港・中国市場Daily」

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