支援機関の力を借りながらM&Aを実行
次に、譲渡先企業を絞り込み、基本合意書を締結します。さらに、買い手は譲り受ける企業の価値調査であるDD(デューデリジェンス)を実施し、財務や法務、不動産、事業の資料などが、基本合意の内容と合っているか確認し、間違いがなければ最終契約の合意に進み、クロージングとなります。これが、マッチングまでの一連の流れです。
案件の規模や相手先企業の見つけやすさにもよりますが、M&A仲介会社の場合、大手によるフルサービス~中堅の一部サービスでも、相談からクロージングまでに1年かかることは珍しくありません。いずれにしても、慎重に進めるのが基本といえます。
なお、資金面の問題から金融機関や大手M&A仲介会社に依頼できない中小企業の場合は、下図に挙げた支援機関の力を借りながらM&Aを進めていくことができます。
例えば、マッチングだけを請け負うM&Aプラットフォームを利用する場合、相談は事業承継・引継ぎ支援センターなどの公的機関、企業価値評価は税理士や金融機関など、事情を知る関係者のサポートを受けることで、結果としてフルサービスに近いM&Aが実現するのです。
■M&Aに対する国からの補助金制度
M&Aによる事業承継では、仲介手数料やアドバイザリー費用など、さまざまなコストを売り手企業が負担します。
なかには、着手金だけで数百万~1000万円を超えることもあり、一般的には買い手が負担するDD費(デューデリジェンス)用も、株式交換などでお互いの株式価値を算定しないといけない場合は、売り手もDD(デューデリジェンス)を実施して買い手側を調査するなど、一部のケースでは双方にコストが発生します。中小企業にとってはネックに違いありません。
こうした場合に検討したいのが、国による補助金の活用です。その一つが、事業再編や事業承継に伴う経営資源の引継ぎを行う中小企業・小規模事業者等を支援する「事業承継・引継ぎ補助金」(令和3年度)です。同制度の「専門家活用」の「売り手支援型(Ⅱ型)」ではM&A時に専門家を活用した際などに最大250万円の補助を行っています。
「地域の雇用をはじめ、地域経済全体をけん引する事業などを行っていて、事業再編・事業統合により、これらが第三者により継続されると見込まれる」など、一定の要件を満たすことができれば利用できるので、うまく活用したいところです。
一方、「中小企業による経営資源集約化の促進に係る税制」では、M&Aを実施する中小企業に対して減税するなど、買い手企業を支援する制度も令和3年度に創設されました。国としても売り手・買い手を優遇してM&Aによる事業承継を加速させたい狙いがあります。
瀧田雄介
株式会社M&Aナビ 代表取締役社長