(※写真はイメージです/PIXTA)

中堅M&A仲介会社やM&Aプラットフォームのサービスが登場したことで、中小企業もこれらのサービスを活用して事業の買い手を見つけられるようになってきました。M&A市場が活性化することで、解散や廃業を選ぶ企業が減る可能性があります。株式会社M&Aナビ社長の瀧田雄介氏が著書『中小企業向け 会社を守る事業承継』(アルク)で解説します。

「事業譲渡」する理由をハッキリとさせる

■M&Aのマッチングに向けた流れ

 

ここでは、M&Aのマッチングに向けた流れを解説しますが、それを図示したのが下図です。基本的には銀行や仲介会社といったM&Aを進めるパートナーの選定から始まり、最終契約の締結~クロージングというプロセスをたどります。

 

ただし、前準備として必要なのが、自社の「磨き上げ」です。競争力を高めたりガバナンスを構築するといった企業価値向上に向けた取り組みを行ったりすることで、よりよい買い手候補が見つかり、譲渡価格が上がる可能性があります。

 

また、「なぜ事業譲渡するのか」といった目的を改めて明確にしておきましょう。というのも、当初は「会社の発展のため」「従業員の雇用のため」と思っていたとしても、いざ譲渡価格が算出されるとその価格に納得がいく・いかないなど、気持ちにブレが生じる可能性があるからです。

 

交渉において金額や雇用の維持、社名の継続など、どこまで譲ることができ、どこからは譲れないのか線引きや交渉内容を決めておくと、希望にかなう譲渡先企業が見つけやすく、交渉もスムーズに進みやすくなります。

 

もう一点は、情報を包み隠さず明らかにすることです。売り手にすると、会社が売却できないと困るので情報を隠したい気持ちがどうしても働きますが、それが発覚すると買い手の信頼を一気に失うことになります。

 

少なくとも買い手はDD(デューデリジェンス)のために経営者の時間や専門家に調査費用を支払っているので、その後に新たな事実が発覚したり、「実はこういうことが……」と打ち明けられたりしても、あとの祭りです。伝えにくい情報こそあらかじめ開示する姿勢が売り手には求められます。

 

瀧田雄介著『中小企業向け 会社を守る事業承継』(アルク)より。
瀧田雄介著『中小企業向け 会社を守る事業承継』(アルク)より。

 

■M&Aを進める際のパートナーは得意とする規模や分野を調査して決めること

 

そして、いざM&Aを進める上でのパートナーを選定する際は、過去の実績や利用者の声などを事前に調査することです。自分だけで判断しにくいのなら、顧問税理士など面識のある士業にアドバイスを求めてもいいかもしれません。

 

ポイントは、手掛ける案件の規模や得意とする業種・業界です。中小企業のM&Aであれば必ずしもフルサービスである必要はなく、規模によってはM&Aプラットフォームの活用で十分なこともあります。規模や内容と照らし合わせて考えることです。

 

パートナーが見つかり実施に向かう場合は、情報が漏洩しないような秘密保持を含めた契約を結びます。この時点で着手金が生じる場合は、専任のアドバイザーがつき現経営者の相談に乗りつつ買い手を探し、今後の交渉を進めていくことになります。

 

なお、この時点では取引先など第三者に知らせる必要はなく、社内の役員・従業員に対しても告知するタイミング・内容は十分注意することです。基本的には株式譲渡契約以降で構いません。

 

続いて行うのは、事業評価です。一般的には時価純資産にのれん代(年間利益に一定年数分を乗じたもの)を加味した評価方法を用います。これをもとに買い手候補との交渉が進められ、譲渡価格や今後の事業展開や経営方針、従業員の待遇などについて、話を詰めていきます。

 

先ほど述べたように、譲ることができる点とできない点を明確にして臨むことです。

 

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※本連載は、瀧田雄介氏の著書『中小企業向け 会社を守る事業承継』(アルク)より一部を抜粋・再編集したものです。

中小企業向け 会社を守る事業承継

中小企業向け 会社を守る事業承継

瀧田 雄介

アルク

後継者がいなくても大丈夫!大事に育ててきた会社を100年先へつなぐ、これからの時代の「事業承継」を明らかにします。 日本経済を支える全国の中小企業は約419万社。そして今、その経営者の高齢化が心配されています。2025年…

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