事業承継案件は小規模案件以下に集中
■M&A仲介会社による対応
M&Aには売り手企業の売上高が10億円超の大規模案件から、売上高3000万円以下の超小規模案件まで分類することができ、それぞれに対して民間M&A仲介会社の対応は大きく変わります。
まず、売上高10億円超の大規模~売上高1億円超の中規模案件に対応するのは大手の仲介会社で、専任のM&Aアドバイザーが相談からマッチング、DD(デューデリジェンス:企業調査)など一連のサービスをフルで提供します。
国内では日本M&Aセンターやストライクなどが該当します。これら大手企業は専門知識に長けたアドバイザーが在籍し、規模や業種・業界に応じて最適なソリューション(解決策)を提供するのが特徴です。
売上高3000万円超~1億円未満の小規模案件に対応するのは、提供サービスを絞った中堅規模のM&A仲介会社です。基本的にはM&Aアドバイザーが付いて案件をサポートしますが、大手のようなフルサービスではなく、「アドバイザー業務とマッチング」というように一部のサービスにとどめているのが特徴といえます。
売上高3000万円以下の超小規模案件に対応するのは、当社のようなオンラインのM&Aプラットフォームの提供事業者です。
その特徴は、M&Aアドバイザーは付かず、売り手と買い手がサービスに登録のうえ、条件に見合った相手と自由にマッチングするというサービス内容であり、人が仲介しないからこそ低コストで利用することができます。近年は私たちをはじめ、国内外で事業者が増えています。
■事業承継が目的のM&Aは小規模案件以下に集中している
大規模~中規模以上の案件は成長を志向する大手企業によるM&Aであり、だからこそプロフェッショナルによる高度なサポートが求められます。
他方、事業承継に困っているのは小規模~超小規模案件に該当する中小企業なので、おのずと中堅のM&A仲介会社やM&Aプラットフォームの活用が前提となります。フルサービスは受けられませんが、大手のM&A仲介会社に比べるとコスト面では優位性があり、後継者についての課題を抱える企業にとって、M&A実施のハードルを下げることが期待できるでしょう。
なお、M&A仲介会社に対する報酬は、着手金や中間金、月額報酬などが挙げられますが、細かくは各社で異なります。成功報酬を請求されるケースは多いのですが、株式価値や総資産などの「基準となる価額」に応じて手数料率が異なる「レーマン方式」を採用するところがほとんどです。
仮に基準価額が100億円で手数料率が1%の場合、成功報酬は1億円ですが、5億円で手数料率が5%であっても成功報酬は2500万円にしかなりません。実際、中小M&Aの譲渡価格は2000万円以下が約6割で、これではM&A仲介会社が受け取る成功報酬の額も限られます。こういった事情もあり、大手M&A仲介会社は中小企業のM&Aに消極的にならざるを得ないのです。
ただし、反対の見方をすると、中堅M&A仲介会社やM&Aプラットフォームのサービスが登場したことで、これまではM&Aのサポートを受けることができなかった中小企業も、いまではこれらのサービスを活用して事業の買い手を見つけられるようになっています。
M&A市場が活性化することで、解散や廃業を選ぶ企業が減っていけば、日本経済の維持や発展にプラスに働くはずです。