前回は、相続税対策のために購入した不動産の「出口戦略」について説明しました。今回は、不動産を購入するにあたって、利回りよりも「売却できるかどうか」を重要視すべき理由を見ていきます。

利回りがよくても、元本が回収できなければ意味がない

賃貸不動産を利用して相続税対策を検討する場合に、執拗に利回りを気にされる方がいらっしゃいますが、筆者は利回りを重要視しすぎることに疑問を感じています。

 

もちろん利回りがいいに越したことはありませんが、それよりも将来的に売却できるか否かのほうが重要だと考えています。これは相続税対策の場合に限らず、資産運用の場合にも言えることです。

 

たとえば、販売価格2億円で表面利回り10%の賃貸不動産を購入した場合、確かに毎年家賃収入として2000万円が入ってきます。入ってはきますが、将来売れるか否かわからないということは、要するにそれは元本保証がないのと同じ意味です。

 

また、利回りがいくらよくても、どこかで元本を回収しないことには意味がありません。元本を回収しない、あるいはできない投資は意味がありませんし、元本を回収して初めて利益が確定するのです。

 

よって、利回りはいいが将来売却できるか不安な物件と、利回りは平凡だが将来確実に売却できそうな物件であれば、迷うことなく後者を選択すべきなのです。

老朽化する前に「購入価額に近い金額」で売却する

相続税対策でよく耳にするのは、相続税対策とはいえオーナーとして不動産賃貸業を経営するのだから、被相続人にも相続人にも経営者としての資質が必要だ、という話です。ビジネス的な視点を持っていなければとてもではないが務まらないということです。

 

しかし、売却を前提にしていれば、そのようなことを気にする必要はありません。「賃貸不動産を所有して相続税対策をする」あるいは「借入金の返済ができるシミュレーション」までは、相続税対策に携わってきた方なら考えられることです。

 

しかし、売却まで考えられる人は、あまり多くないように思います。ですから、相続税対策を扱った雑誌や書籍にもほとんど書かれていませんし、話題にもなりません。

 

私がチームの仲間に依頼して賃貸不動産を探すときも、ほとんどの場合、10年後に売却できることを前提としています。どんなに立地がよく、建物がモダンで人気が出そうであっても、老朽化が進めば売却したくてもできなくなります。売却したいと思ったときに、購入時に近い金額で売却できることも本当はかなり重要なことなのです。

 

ビジネスの視点を持つべきだ、というならば、購入価額に近い金額で売却できるときに売却することこそ、ビジネスの視点なのではないでしょうか。

 

実際、私が手がけた案件では多くの方が、この話に納得してくださり、売却を前提とした対策を選択なさっています。それでこそ、最終的な賃貸不動産を使った相続税対策が完成します。出口まで考えられたその戦略によって、相続が発生したあとの安心感まで得られるのです。

 

あなたが不動産を購入したように、きっと他の誰かもその不動産を購入します。不動産の選定がうまくできていれば、相続発生後の「売却」に死角はほとんどないのです。

本連載は、2013年11月27日刊行の書籍『大増税時代に大損しない相続税対策』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

大増税時代に大損しない 相続税対策

大増税時代に大損しない 相続税対策

北村 英寿

幻冬舎メディアコンサルティング

相続税対策を成功させるためには、実行に移してからの最終的な「出口戦略」まで考える必要があります。 「出口戦略」とは、相続税対策のために購入した賃貸不動産の最終的な顛末を考えることです。 相続発生後は、基本的にそ…

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