(※写真はイメージです/PIXTA)

「まだ大丈夫と思いたい。でも、知っておけば準備できる。」高齢者認知症外来・訪問診療を長年行ってきた専門医・近藤靖子氏は、書籍『認知症のリアル 時をかけるおばあさんたち』のなかで「高齢者・認知症患者が抱える熱中症のリスク」について解説しています。

「九州育ちで寒がりなので」5〜6枚服を重ね着する女性

さらに認知症が進行してくると、ズボンの下にパジャマをはいていたり、下着も2〜3枚重ね着をしていたりすることもあります。そういう場合には、「汗をかいて脱水症気味になりやすいので、水分は十分に取って下さい」と付け加えます。ご家族や職員が見守ってくれていれば、一応よしとします。

 

以前、ある施設にいた極端に寒がりのおばあさんで、いつも5〜6枚服を重ね着してまるで十二単(ひとえ)のようないでたちの方がいました。「九州育ちだから寒がりなので」というのが厚着の言い訳です。さすがにそれだけ着込んでいると、エアコンが効いていてもかなり汗をかきます。

 

「どうしてこんなに汗をかくのでしょう?」と診察時に聞くので、私はここぞとばかりに「暑いからですよ。服を少し脱いでみては?」と促すのですが、「私は寒がりなので」と繰り返して絶対薄着にはなってくれません。さすがに汗で下着が濡れるのは気持ちが悪いようで、さらに暑くなると自分で服の下にタオルを巻くようになっていました。

 

するとタオルが汗で濡れる、タオルを取り換える、またタオルが濡れる、の繰り返しで、濡れたタオルは部屋に何枚も吊って干されていました。施設職員の誰もこのやり方を変えられませんでした。

 

この方はかなり認知症が進んでいましたが、自分で、「汗をかくのでタオルで吸収して、そのタオルを順次取り換える」という思考回路はしっかりとありました。でも、人の言うことを理解し、納得して、言われたように行動するのは苦手なままでした。

 

 

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近藤 靖子

和歌山県和歌山市に生まれる。京都大学医学部および同大学院卒。 医療に関しては麻酔科、眼科、内科、神経内科、老年内科の診療に従事。1994年家族と共に渡米し、オハイオ州クリーブランドのクリーブランドクリニックにて医学研究を行う。 その後、ニューヨーク州ニューヨーク市のマウントサイナイ医科大学、テキサス州ヒューストンのMDアンダーソンがんセンターにて医学研究に従事。 2006年末に帰国し、2008年千葉県佐倉市にさくらホームクリニックを夫と共に開院し、主に高齢者医療を行う。

本記事は幻冬舎ゴールドライフオンラインの連載の書籍『認知症のリアル 時をかけるおばあさんたち』(幻冬舎MC)より一部を抜粋したものです。最新の法令等には対応していない場合がございますので、あらかじめご了承ください。

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